『カプリオル組曲』とその原典である『オルケゾグラフィ』についての蘊蓄をつらつら書き記すシリーズ記事。前回の「バス=ダンス」に続いて、今回は「パヴァーヌ」についての蘊蓄です。
アルボー
…パヴァーヌは廃れてしまったわけでも、まったく踊られていないわけでもありません。昔ほど頻繁に踊られていないことは事実ですが、私は、決して廃れることはないと思っています。パヴァーヌは、一般的にバス=ダンスの前に踊られていたものです。今の楽士は、良家の娘が結婚式を挙げるために教会に向かうとき、また何某かの名士の信徒会の司祭たちや旗手や会員たちを先導するときにパヴァーヌを演奏します。
p.28v
カプリオル
このパヴァーヌとバス=ダンスは、優雅で荘重なものであって、高貴な方、とくにご婦人方や令嬢方にふさわしいと思います。
アルボー
貴族の男性が踊るときはケープや剣をつけたままでよいのですが、あなたのようなそれ以外の人たちの場合は、長い上衣をまとって礼儀正しく落ち着き払って足を運びます。そして令嬢方はつつましやかな物腰で目を伏せ、時おり、処女のような恥じらいをもって列席の人々を見ます。とくにパヴァーヌは、厳かな祝祭の日に、王や王子や大貴族たちが、立派なマントや儀式用の服に身を包んで姿を見せるときに用いられます。もちろんそのとき、王妃や王女や貴婦人たちも服の裾を長く引いて、時には令嬢方に裾を持たせて共に進みます。
pp.29r-29v
踊りというよりも、舞踏会の会場に高貴な方が入場されてくるときの入場行進曲のような体のようです。『カプリオル組曲』では2曲目に配されていますが、1曲目にした方がよいのかもしれません。インパクトは確かにバス=ダンスに敵いませんが。
『オルケゾグラフィ』には「4声のパヴァーヌ」という譜表が掲載されていて、歌詞も書かれています。太鼓をバックにした合唱曲のようです。再現してみました。
なかなかいい感じです。歌詞は再現できませんでした。初音ミクを連れてくれば再現できるかもしれないのですが…
『オルケゾグラフィ』も『カプリオル組曲』もまだまだ続くのですが、『オルケゾグラフィ』で通読して面白いのはここまで。実は、この2曲は比較的、ダンスのステップが単純で、『オルケゾグラフィ』を読むのにそれほど苦労はありませんでした。この先はステップが格段に難しくなります。ひとつひとつのステップについては、挿絵を見て、文章を読んで、自分でやってみて、というようなことをしながらでないと理解ができません。そして、ひとつひとつのステップを理解したうえで、そのステップをどの順番で踊っていくのかが説明されています。『カプリオル組曲』に収録されている舞曲だけでなく、ガボットとかクーラントとか、わりとお馴染みの曲についても解説されているのですが、ステップの解説を、辞書を引くように見ながら読まないと、どんな踊りなのかよくわかりません。
それで、図書館で借りた本はいったん返却して、本屋さんに取り寄せてもらうことにしました。暇なときに真剣に読もうと思っています。
演奏の方もちょっと難しくなって、踊りの練習をしている場合ではないのですが…。
そんなことで、再開がいつになるかはわかりませんが、奮発して本も買ったので、たぶん、いつかこの続きの記事を書くと思います。お暇な人だけ見てください。