2020年3月28日土曜日

弾き合い会

 弾き合い会というのに出てきた。
 初めてで要領を得なかったのだが、普段着でやる発表会、客席を明るくしてスポットライトを当てない発表会、ってところだろうか。いつもお世話になっているスタジオではなくて、いつもお世話になっている先生が、ご自身のヴァイオリン教室で面倒を見ておられる生徒さんの発表会で、小学校に入るかどうかの子供から、定年後の道楽でやっている大人まで、15人ぐらいが入れ代わり立ち代わり演奏するのを聴いた。

 上手いなぁ、と思ったのは高校生ぐらいの女の子。他の生徒さんとデュオをしたり、ちょっと超絶技巧っぽいのを無伴奏で弾いたり、ヘンデルのソナタ4番をフルで弾いたりと、大活躍で、どれも聴かせる。音色が違う。
 小学校に入るかどうかぐらいの女の子は、父親と思しき男性のピアノ伴奏で、これも結構難しそうな曲を堂々と演奏。
 大人の演奏は、和気あいあいとして楽しそう。アンサンブルで弾かれる方が多く、女性二人で、シュターミッツとかいうモーツアルトに似た曲想の二重奏を弾いておられたのは、曲も良かったし、ちょっと羨ましいぐらいに楽しそうだった。
 最後は、その二重奏の一人と、さっきの小学生かどうかという女の子が、二人でバッハのドッペル。どうやら二人は母子のようだ。超絶機構の女子高生を含む数人が伴奏をする中で、二人のソロが掛け合う。これも何だか羨ましくて、微笑ましくて、しかも上手くて、見ているのが嬉しくてたまらないという気分。

 自分の演奏は、というと、今回はそんなに難易度の高い曲ではなかったが、とりあえずこの1週間はこればっかり練習して、無事に終了。上手かったかどうかは分からないけれど、そこそこ楽しそうには弾けたと思う。

 それにしても、こんな時期によくやっていただけたものだ。
 本当は発表会の予定だったのだが、会場からキャンセルを入れられたらしく、その代わりに、ちょっと大きめの会場が借りて、窓を開けて、客席も隣まで2mぐらいの間隔をあけて、入口には消毒液を置いて、とまあ、いつもならやらなくていいことをいろいろやって開催していた。こういうことに批判的なことを言う人もいるが、人間、パンを食っていれば生きていられるというものではない。あれもダメ、これもダメ、とまるで戦争中のような息苦しさの中で、こういうこともないと生きていることが実感できない。しかし、しばらくは手洗いうがい励行で、ややこしい病気にかからないようにしないと、ややこしいことになってしまいそうだ。

 ともあれ、いい弾き合い会だった。

2020年3月22日日曜日

映画「星屑の町」

 このブログにはバヨネタしか書かないことにしているのだが、今日は映画評を書きたい。ヴァイオリンだとかクラシック音楽だとかには何も関係のない映画だけれど、自分の中ではこのブログのテーマと通じるところがあったから、その接点を探しながら書いていきたい。

 まずはどんな映画なのかの説明なのだが、いったいこの映画の主演は誰なんだろう。歌手を夢見る田舎娘役ののん(能年玲奈)なのか、売れないコーラスグループを続けている大平サブロー、ラサール石井ほかのおじさんたちなのか。それを考えると「寅さん」に辿り着く。「寅さん」シリーズにはそれぞれ必ずマドンナと呼ばれる女優がいて、寅さんとマドンナが互いの人生を映しながらストーリーが進んでいく。主演は寅さんだけれど、より注目をあつめるのはマドンナ。この映画もそんな感じだ。
 詳しい紹介は公式ホームページで

 と、説明もそこそこに感想なのだが、終始くすくすと笑えて、でも少し泣けて、いい映画だった。ホームページによると、25年も続けている舞台がベースになっているそうだ。映画を観ていても、舞台を思わせるシーンが多い。学校の体育館での公演で、控室になっている教室に、代わる代わる人が入ってきて、おじさんコーラスグループの6人と掛け合っていく展開は、まるで吉本興業の喜劇を見ているようだ。
 大阪生野区限定で6位になったことのあるコーラスグループのメンバーを演じるのは、生野区限定とは言わないが、おそらく始めたころは関西限定で6位ぐらいを目指していた役者さん、芸人さんだったのだと思う。いい歳をして夢を追いかけ続ける姿は自虐的でもあるが、それをすべて否定したりはしない。

おもろいやろ。でもな…

という余白が残されている。そこがいい。

 マドンナ役ののんもずいぶん苦労している人のようだ。歌手を夢見て都会に出るも、大人たちのいいカモにされて田舎に帰ってくる。それでも歌手を夢見続けるという役どころは、どこか彼女自身に重なるのかもしれない。
「都会に行けば、あんたみたいな娘、いくらでもいるよ」
けれど、東北を舞台に歌手を夢見る田舎娘を演じたら、だれにも文句を言わせない。彼女自身は関西の出身だそうだが、朝ドラ以来、東北地方での彼女の存在は絶大で、そこが彼女の居場所のように思える。

 映画の中では、彼女はおじさんコーラスグループの中に自分の居場所を求めていく。おじさんたちはおじさんたちで、彼女がメンバーに入ることで夢を叶えていく。夢を追う姿を滑稽に描きながらも、それを全部否定しきらない残されたところに、おじさんたちと田舎娘の「居場所」が描き出されていく。そうか、夢とは居場所なんだ。夢のないところに居場所はない。それがどんな小さな夢でも。

 書いているうちに何を書きたかったのかよく分からなくなってきたが、とにかくいい映画だった。
 

2020年3月1日日曜日

新型コロナ 影響じわり

 世間は新型コロナで大騒ぎ。普段からこの季節は花粉症でマスクをしているので、あまり影響はないと思っていたのだが、ここへきて影響がじわりと押し寄せてきた。会社では、不要・不急の出張はやめるように、とのお達しが出ているのだが、もともと年度末に予算を消化するために行くような出張があった訳ではなく、何かの必要があって、しかもその日に行く必要があるから行く出張ばかりなので、これは誰に対するお達しなのだろうか、と訝しる意見多数。ただ、これも「○○協議会年次総会」みたいなのが中止になったりしていく必要がなくなったりといったことは起こっている。

 それがここにきて、バヨライフにも影響が出てきた。

 まず3月4日に予定されていたヴィヴァルディ祭が中止。「調和の霊感」6番と、「冬」のラルゴを練習して、「これなら行ける」というとこらへんまで来ていたので、これは残念。

 そして、3月に予定されていたアンサンブルの発表会が延期の公算大。

 日本では毎年3,000人ぐらいの人がインフルエンザで亡くなっているので、感染病対策というのは新型コロナがどうのという問題ではなく、普段からやっておくべきことなのだが、どうも権力者というのは危機感を煽って人々を不安にさせることによって自らの地位を守ろうとする人種のようだ。報道によれば、例のクルーズ船でも、同じ部屋にいながら、夫婦の片方が陽性、もう片方は陰性というようなこともあったようなので、感染力もその程度、つまり同じ部屋にずっといても必ず感染るというほどのものではないと思っていれば良いと思う。もともと冬場は風邪をこじらせて肺炎になる人の多い季節。桜が咲くころにはこんな騒ぎも収まって、各地で「桜を見る会」が催されるようになればよいのだが。