2020年3月22日日曜日

映画「星屑の町」

 このブログにはバヨネタしか書かないことにしているのだが、今日は映画評を書きたい。ヴァイオリンだとかクラシック音楽だとかには何も関係のない映画だけれど、自分の中ではこのブログのテーマと通じるところがあったから、その接点を探しながら書いていきたい。

 まずはどんな映画なのかの説明なのだが、いったいこの映画の主演は誰なんだろう。歌手を夢見る田舎娘役ののん(能年玲奈)なのか、売れないコーラスグループを続けている大平サブロー、ラサール石井ほかのおじさんたちなのか。それを考えると「寅さん」に辿り着く。「寅さん」シリーズにはそれぞれ必ずマドンナと呼ばれる女優がいて、寅さんとマドンナが互いの人生を映しながらストーリーが進んでいく。主演は寅さんだけれど、より注目をあつめるのはマドンナ。この映画もそんな感じだ。
 詳しい紹介は公式ホームページで

 と、説明もそこそこに感想なのだが、終始くすくすと笑えて、でも少し泣けて、いい映画だった。ホームページによると、25年も続けている舞台がベースになっているそうだ。映画を観ていても、舞台を思わせるシーンが多い。学校の体育館での公演で、控室になっている教室に、代わる代わる人が入ってきて、おじさんコーラスグループの6人と掛け合っていく展開は、まるで吉本興業の喜劇を見ているようだ。
 大阪生野区限定で6位になったことのあるコーラスグループのメンバーを演じるのは、生野区限定とは言わないが、おそらく始めたころは関西限定で6位ぐらいを目指していた役者さん、芸人さんだったのだと思う。いい歳をして夢を追いかけ続ける姿は自虐的でもあるが、それをすべて否定したりはしない。

おもろいやろ。でもな…

という余白が残されている。そこがいい。

 マドンナ役ののんもずいぶん苦労している人のようだ。歌手を夢見て都会に出るも、大人たちのいいカモにされて田舎に帰ってくる。それでも歌手を夢見続けるという役どころは、どこか彼女自身に重なるのかもしれない。
「都会に行けば、あんたみたいな娘、いくらでもいるよ」
けれど、東北を舞台に歌手を夢見る田舎娘を演じたら、だれにも文句を言わせない。彼女自身は関西の出身だそうだが、朝ドラ以来、東北地方での彼女の存在は絶大で、そこが彼女の居場所のように思える。

 映画の中では、彼女はおじさんコーラスグループの中に自分の居場所を求めていく。おじさんたちはおじさんたちで、彼女がメンバーに入ることで夢を叶えていく。夢を追う姿を滑稽に描きながらも、それを全部否定しきらない残されたところに、おじさんたちと田舎娘の「居場所」が描き出されていく。そうか、夢とは居場所なんだ。夢のないところに居場所はない。それがどんな小さな夢でも。

 書いているうちに何を書きたかったのかよく分からなくなってきたが、とにかくいい映画だった。
 

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