2024年2月25日日曜日

珈琲と楽器の意外な関係

 隣町でコーヒーに関するイベントをしていた。その街にある12のカフェのオーナーが、町の美術館の一室に集合して、同じコーヒー豆を、それぞれの店のやり方で焙煎し、それぞれの店のやり方で淹れて、利き酒のように味を比べるというもの。これがなかなか面白かった。

 同じ豆でも、深く煎れば苦味がより増し、浅く煎れば酸味が際立つ。粗挽きならばマイルドに、細挽きならばより味わい深く淹れることが出来る。いやそれだけではない、ドリップかサイフォンか、ペーパーかネルか、ゆっくり注ぐのか比較的早く注ぐのか、熱湯なのかそうではないのか。いろんな要素でコーヒーの味は変わる。同じ豆を使っているのに、12店がそれぞれ、まったく違う味なのだ。もしかすると、同じ店でももう一度行けば味は違ったかもしれない。

 焙煎こそは店でやって持ってきているが、その場で挽いて、その場でお湯を沸かして、その場で淹れてもらえる。ドリップのときの泡立ち。そこに静かに注がれていくお湯。沸き立つ湯気。それを間近で見ながら、きっとコーヒーの味は、そのときのオーナーの気持ちで変わるのだろうと思った。レシピが公開され、淹れているところをビデオに撮って、その通りに淹れても、おそらく同じようにはならない。

 これ、どこか楽器の演奏に似ている。

 小さなカップではあったが、さすがに12杯もコーヒーを飲むと、お腹がチャポチャポ言うようだ。そんな体調で地下鉄に乗り込み合奏のレッスンへ。ちなみに、コーヒーのイベントの間、ずっとヴィオラを担いでいたので、相当目立ったかもしれない。

 それはさておき、その合奏なのだが、ヴァイオリンの先生がいろんなところで教えておられる生徒さんが集まってする発表会での合奏なので、ほとんどがヴァイオリン。小さな子供は合奏には加わらないが、高校生ぐらいから大人まで、ヴァイオリンだけは20人以上いる。幼少のときから習っている人もいると見えて、そうとうハイレベルな人から、大人になってから始めたという人まで、レベルもいろいろ。それと比べてヴィオラの生徒は私だけ。本番は先生からプロの方に声を掛けていただいて客演で来てくださるそうなのだが、練習のときは20対1という比率になる。そういうなかで弾くpとかppとかは果たしてどう弾くべきなのか。

 3曲の課題曲のうちひとつが、とにかくpとかppできれいにハモらせたい曲なのだが、小さく弾こうと思うとどうしても頼りない音になって、きれいにはハモらない。一般的には、弓にあまり重みを掛けないとか、駒から遠いところを弾くとか、弓を運ぶスピードを落とすとか、音を弱く、というか小さくする方法はいろいろあるのだけれど、ここは「弱く」でも「小さく」でもなく「細く」弾きたい。ある意味では、客席のいちばん後ろまで細い針のような音が届くような弾き方をしたい。前回の個人レッスンのときに先生にそう言うと、重みは普通に掛ける。駒からの距離も普通。弓はたっぷり使ってスピードは落とさない。ただし、弓を倒して弦と接する面積を小さくすることで、音を細くしなさい、というご指導をいただいた。今日、合奏で試してみると、20人以上のヴァイオリンの中に私一人のヴィオラが見事に溶け込んで、なかなかグッドなハーモニーを作っている。他の曲に関してはいろいろと課題の残ったレッスンだったけれど、この曲に関してだけは
つかめた
という実感が得られた。

 これ、なんだかコーヒーの味と同じなんだよなぁ。深入りすれば苦味が出るとか、細挽きにすれば味わいが深くなるとか、いやそうなんだけれど、そんなことよりも、丁寧に淹れればそれだけ繊細な味になるし、相手のことを思いながら淹れれば、飲む人に好かれるような味になる。

 コーヒーも楽器も奥は深い。

2024年2月17日土曜日

6つの調の音階練習

 テレビのチャンネル権を妻にすっかり支配されているので、ドラマを毎週視るということはなかなかできないのだが、このクールでは珍しく、民放のこのドラマをみている。

https://www.tbs.co.jp/sayonaramaestro_tbs/

 地方のしがないオーケストラを市長が潰しにかかるという、昔からよくあるパターンといえばそうも言えるストーリーなのだが、最近はまったくの創作ともいえないネタかもしれない。大河ドラマで、散楽で藤原氏の理不尽な支配を笑い飛ばす場面がたびたび出てくるが、放送にかかわる人たちも、現代の藤原氏の理不尽な支配に直面していて、それをネタに面白くドラマを作ろうという気持ちがあるのかもしれない。

 そういう難しい話はさておいて、先週のところでは、當真あみが演じる女子高生がヴァイオリンの練習をしているシーンがあって、「6つの調で音階が弾けるようになったよ」という台詞があった。たぶん、イ長調、ニ長調、ト長調、ハ長調、ヘ長調、変ロ長調ではないかなと思う。シャープ3つ、シャープ2つ、シャープ1つ、シャープなし、フラット1つ、フラット2つという6つ。

あぁ そういう練習をしていなかったなぁ

 このところ、休みの日にいろいろな用事が入って、練習時間の確保がますます難しくなっていた。前回のレッスンから10日間もケースを空けないままにしておくと、本当に指が回らない。それで、何度か会社帰りにカラバヨ(カラオケボックスで練習することね)をやるのだが、そういう「まとめ練習」よりも、短時間でいいから毎日何か練習することが効果的なのはいうまでもない。

 と思っているところに當真あみちゃんの台詞があったので、練習の最初にやってみることにした。ヴァイオリンだと、開放弦を活かしてファーストポジションだけで練習できるのだけれど、ヴィオラの場合は5ポジまで上がらないといけない。これもまあいい練習だ。

 今日は音出しができるので、これとSEVCIK、KAYSERである程度、身体全体を温めてから、発表会に向けた練習ということになるが、音階練習なら、普段、指で弦をはじいて小さな音を出しながら夜でも練習できるので、

まずはこういうことを毎日やらなければなぁ

と、いまさらながら初心にかえる。