毎年、季節限定で参加しているアンサンブルの方は、「働き方改革」とやらの関係で雲行きが怪しくなり、定期的に練習に通える可能性が限りなくなくなってしまった(前回の記事参照)。それならば、早めに気持ちを切り替えて、練習に精が出るような課題曲を見つけてこなければ…。
ということで、これを練習することにした。
これは、以前、このブログでも紹介した「数奇な音楽」のひとつ。G.F.ヘンデルと言えば18世紀の前半に活躍した音楽家だが、当時は作曲した作品が全部、出版されるわけでもないので、埋もれてしまった作品というものもないわけではない。実は、こんな協奏曲も作っていたことが、20世紀初頭にわかった。見つけ出したのは、サン=サースとともに「古楽器協会」という団体を設立し、バロック時代の音楽を研究したアンリ=カサドシュというヴィオラ奏者。歴史に名を留める数少ないヴィオラ奏者の一人だ。ところが、のちになって、これはどうやらカサドシュがヘンデルの作風に似せて作った贋作だということが分かり、歴史に名を遺したヴィオラ奏者は、贋作家として名を刻むことになった。
それにしても、よく出来た贋作で、まさにヘンデルの作品と見紛う、バロック的な旋律だ。ただ、やはりヴィオラ奏者としていいところを見せたかったとみえて、技巧的にはバロックの域を超える超絶技巧も取り入れている。バロックなら、だいたい3ポジが弾ければたいがいは弾けるのだが、この曲の場合、7ポジぐらいまで使われる。楽譜を見ると半分ぐらいはト音記号だ。ハ音譜を見慣れた身には読みにくい。たぶん、バロック時代の楽器だったら、7ポジのところなんて指板がなかったのではないだろうか。
そんなこともありつつ、これなら発表会映えもするし、いまから1年かければ、それなりのレベルにはなるだろう、などと思って練習を始め、発表会直前になってなんともならずに玉砕するという、いつものストーリーが始まった感じだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿