2017年10月15日日曜日

続・ヴィオラの名曲を探して

 前回の記事で、ヴィオリストが過去に作曲家の不興をかってヴィオラのための名曲が書かれないようになったのではないかという仮説を立ててみたが、いやそうでもなさそうだ。YouTubeでいろいろ漁っていると、いろんな作曲家がヴィオラのための曲を書いている。

 まずはシューベルト(左の動画)。といっても有名なフランツ・シューベルトとは血縁等はなさそうだ。ウィキペディアによるとドイツ人の作曲家でヴィオリストだそうだ。1754年 ボヘミア(現チェコ共和国)の生まれとある。モーツアルトの2歳上だ。前に見つけたヴァンハルもチェコ人。何かチェコとヴィオラにはつながりがあるのか?
 それにしても、ヴィオラコンチェルトなのに主役のヴィオラが出てくるのが遅い。この動画でも、再生を始めてから2分25秒もしてから初めてヴィオラのソロが聞こえてくる。前の記事で唱えた「ヴィオリスト控えめ説」は正しいかもしれない。

 右の動画は、カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフ。この人も聞いたことのない作曲家なので、ウィキペディアで調べてみた。ハイドンやモーツァルトと同時代のウィーンに生れ、ボヘミア・ノイホーフ(チェコ)で没した作曲家でヴァイオリン演奏家。また出てきました、チェコ。
 この曲も主役が出てくるまでが長い。さきほどの曲ほどではないが、再生を始めてから1分30秒ほどしてから、やっと主役が登場する。このページのリンクはクリックするとそこから再生されるようになっているが、普通は頭から再生されるので、ヴィオラを聴く前に別の動画を見にいかれる方も多いのではないかと思う。

 

まだ続く。次はカール・シュターミッツ。この人も「ドイツのチェコ系作曲家」とウィキペディアに書かれている。1745年生まれ。モーツアルトより10年早く生まれているが、活躍したのは同じ世代かもしれない。もしかすると、この時期のチェコにものすごい美人ヴィオリストがいて、チェコの作曲家が挙って彼女のために曲を書いたのかもしれない。
 この曲もヴィオラ登場までが長い。いったいこの前奏の間、主役のヴィオリストはどんな顔して待っているのか、参考までに右側の動画をつけておいた。18世紀ボヘミアの美人ヴィオリストを想像しながら見るのも一興か。

 

美人の話が出てきたので、女性ヴィオリストの演奏している動画を探してみた。いずれもアンリ・ヴュータンという19世紀フランスの作曲家の作品。発表会用にオーケストラをピアノで弾いているのではなく、最初からピアノとヴィオラのために書かれた曲のようだ。やはり時代が下ると旋律的で技巧も難しそう。

 

 さてさて、ここから先はやや数奇な世界へ。
 いずれもYouTubeで漁って見つけたものだ。最初のはヘンデル。次は音楽の父J.S.バッハの息子、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの作品。新しい時代のものに比べると、どちらもバロック調のなんだか馴染みのある旋律で、いかにもヘンデル、いかにもバッハという感じなのだが、どうも事情が違うようだ。どちらの動画にも「Casadesus」という謎の人物の名前が記されている。例によってウィキペディアで調べてみると、ヴィオラ奏者と紹介されたあとで、長らく忘れられてきた作曲家の作品を蘇らせたと称して、その作曲家風の贋作をつくり、楽譜を売るという詐欺師紛いのことをしていたようだ。これらの曲もそのようにして作られた贋作らしく、「カサドシュ作曲のヘンデル風の協奏曲」「カサドシュ作曲のJ.C.バッハ風の協奏曲」と呼ばれているらしい。ヴィオラの名曲が少ないのは、さてはそういうヴィオリストがいるからか。こいつの所為だったんだ。いやしかし、これには同情の余地がある。かれもヴィオリストとしてヴィオラの名曲が少ないことを嘆き、それならば自分が過去の大作曲家に成り代わってヴィオラの名曲を書こう、などと思ったのかもしれない。いまなら、「ヘンデル トリビュート小品集」だとか「C.P.バッハに愛を込めて カサドシュ協奏曲集」みたいなタイトルを付けて出版すればいいものなのだが…
 それにしても、多くの人にヘンデルやバッハの曲と思わせるだけあって、先輩作曲家に対する尊敬の念とヴィオラに対する愛情を感じる旋律ではないか。

   

 

最後にバッハの右側の動画に出演している韓国人のヴィオリストの別の動画。「キム・サンジン」と読むのだろうか。もしかすると、韓国では葉加瀬太郎ばりの人気者なのかもしれない。こういうタレント性のある人が出てくるとヴィオラのステータスも上がるのだが。

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