レッスンではバッハ無伴奏チェロ組曲1番プレリュードをヴィオラで弾くところを見ていただいている。前にもこのブログの記事に張り付けたが、ヴィオラで弾くとこんな感じになる。
この動画でいうと、1分23秒ぐらいのところでフェルマーがかかって、いったん曲が終わった雰囲気になってから、それまでとは異なる展開になっていく。そこのところが、なんとなく音をひとつひとつ拾っていっているようで、フレーズとしてのつながりがない。
それは自分でもわかっていたのだが、今回のレッスンではヒントをもらえた。
そこから1分56秒ぐらいまでは、上昇音階と下降音階が交互に繰り返されるのだが、上昇音階は男性によるバリトン、下降音階は女性によるソプラノで、お互いが対話するように弾きなさい、ということだ。 この動画ではちょっとわかりにくい。たぶん、そういうイメージではないのだろう。
だけど、先生のこのアドバイスはなかなか斬新だった。
男性と女性が言い争いをしているような感じで、男性の方はあくまでも理を唱え、女性の方は感情に訴えて時には涙も流す。そういうシーンが目に浮かんでくるようではないか。
前半のところはどこか牧歌的な曲想だが、後半のこの部分はかなり様相が違う。そして、2分目ぐらいからはさらに様相が異なってくる。
これはたぶん、この曲のあとに始まる本編のプレリュードとして、映画の予告編か、火曜サスペンス劇場の冒頭の、テーマ曲が流れる前の、ドラマのハイライトをちょっとずつ映して「今日は見ようかな、どうしようかな」と思っている視聴者をテレビの前に座らせるあれみたいな効果を狙ているのだと思う。
前半は、ドラマの主人公二人が出会った田園風景だと思う。あるいは海かもしれない。クレッシェンド、デクレッシェンドを繰り返しながら弾いていると、なんとなく渚に波が寄せては引いていくような感じがする。1分12秒ぐらいから、その牧歌的な風景にやや変調が現れる。それまでの単調で貧しい生活から何か変化を求めるようなフレーズになっている。
1分23秒からは、さきほども言ったように、男性と女性が言い争うような感じ。「あの貧しい生活は嫌だといったじゃないか」「いま自分たちの生活はこんなに豊かになっている」と男性が主張するのに、「だけど、何か大事なものを失ったようにおもう」と女性がいう。そしてハラハラと涙を流す。
1分55秒から2分15秒までのフレーズは、ずいぶん都会的だ。なにか工場で次々に製品が作られているような、あるいは石畳の上を忙しなく人々が行きかっているような感じだ。きっと男はそんな都会の生活に夢を描いていたに違いない。
さあこのドラマ、果たしてどんな展開になるのか。
2分15秒からの最後のフレーズは、そのあとに続く本編への導入部分。「さあ、これから始まりますよ」という感じだ。
お、なかなかいい感じのストーリーが出来た。ちょっとそんなふうに聞えるように頑張ってみよ。
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