2023年6月10日土曜日

コンテクストの濃い曲

 スタジオの発表会が8月にあることが決まったので、まったくジャンルの違う楽器を弾いている中年男性3人が、なにか「出し物」をしようということで、曲を物色。結局「宇宙戦艦ヤマト」を弾くことになった。主旋律は誰かに偏らないように振り分けたのだが、ちょうど

必ずここへ 帰ってくると

のところがヴィオラになった。

 私たちの世代にはすっかりお馴染みの曲で、インストゥルメンタルで聴いていても、頭の中では歌詞が重なってくる。弾くときにイメージが付きやすい反面、イメージ通りに弾けない時にダメージも大きい。

 「宇宙戦艦ヤマト」というのは、私が小学生の時に、夕方の5時ぐらいから、うちの近所では10チャンネルで放送されていたアニメーション番組で、たいていの男の子は、放送のある日はさっさと家に帰ってテレビの前に釘付けだった。ガミラス星人という悪い宇宙人が地球に爆弾をいっぱい落して、おかげで地表はすっかり放射能で汚染され、もうあと1年で人類は滅亡だ、という時に、はるか宇宙のかなた、イスカンダルという星から、うちの星に地球を救う装置がありますから取りに来てください、というメッセージが届いて、それを信じて、宇宙戦艦ヤマトで戦いながらイスカンダルまで行って帰ってくる、というお話し。

 だから、「必ずここへ帰ってくる」という歌詞は、めっさ大事なところ。

 力強く、自信をもって、迷いなく弾きたいところなのだが、これがなかなかうまくいかない。「ララレーファミドレー」なので、ララは開放弦に任せてセカンドポジションに上がり、002ー4312ー としたいところなのだが、セカンドポジションというのは、どうも一筋縄でいかない。何となく音程が不安定で、

本当に帰ってくるの?

といいたくなる。「走れメロス」でも、もっと自信をもって「必ず帰ってくる」と言っているはずだが、それ以上に頼りない。

自分たちだけ、イスカンダルに逃げて、そこで生き残るつもりなんじゃないの?

という雰囲気。もはや「宇宙戦艦ヤマト」の世界観がボロボロになってしまう。これだから、コンテクストの濃い曲はやりにくい。泣き言を言っていても仕方がないので、ちゃんと信じてもらえるように弾くしかないのだが。

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