2018年12月16日日曜日

公民館の音楽会

 これまで何人かの先生にヴァイオリンやヴィオラのご指導をいただいてきたが、いちばんお世話になった先生と言えば、間違いなくこの先生だ。子供がピアノを習い始めたのを追いかけるように、いまのスタジオでヴァイオリンのレッスンを受けるようになった時は男性の先生だったのだが、その先生がイタリアに留学されることになって、そのあとを引き継いで、このひと癖もふた癖もある生徒の面倒を9年間もみてくださった先生だ。習い始めた時はまだ音大の学生さんだった。結婚されてもレッスンを続けてくださっていたのだが、出産のときにスタジオを退職された。きっとしばらくは子育てに専念されていたのだと思う。
 その先生が近くの公民館の音楽会にお越しになられる。

 スタジオの先生は、どの方もプロなので、リサイタルをされたり、楽団に入っておられる先生は楽団のコンサートがあったりすると、必ずフライヤーをスタジオに持ってこられるのだが、この先生はそういうことをされたことがない。生徒の前で演奏するのは緊張するのだそうだ。いや分からなくもないのだが。だからスタジオの発表会のあとの講師演奏以外のステージを見たのは2回だけ。スタジオの奥様から情報を仕入れて、こっそり見にいく。トラなんかで弾かれているので、後ろの方におられるのだが、そういうときは、どんなに大勢がステージに載っていようと、先生だけガン見。見ているものの気分としては、そこは先生のリサイタルで残りの人は伴奏なのだが、黙って見にいっているので、次のレッスンで感想をいうとかそういうこともないまま今日に至っている。

 今回の音楽会の情報もスタジオの奥様から仕入れた情報。
 会場は3階建ての小さなビルの最上階。周りに高い建物がないので窓から琵琶湖が見渡せる。ホールとはいっても、パイプ椅子が70脚ほど並べられた広間で、お客さんは地域の少し年配の方が多かった。

 ママさんコーラスの合唱やピアノのコーナーのあと、いよいよ先生が登場。緑のドレスに包まれた美しい肢体は、まるで人形かお姫様のようだ。容姿の話が過ぎるのは先生に失礼かもしれないが、照明も舞台もない会場なのに、まるでそこにスポットライトが当たっているようだ。会場中の視線が先生に釘付けになっている。
 明るい会場なので、こちらの顔も先生から見える。演奏のときに、いちど、ほんの少しだけれど、あからさまにこちらをご覧になった。
ちゃんと見ておきなさいよ
と言われているようだ。もちろん、その瞬間も、結構真剣な目で見ていた。ボウイングだとかフィンガリングだとかを見ながら、まるでレッスンを受けているような気分になる。演奏曲は、タリスの瞑想曲など、ヴァイオリンのリサイタルで「小品」として弾かれる曲が4曲。ほんとうにあっという間だった。

 演奏が終わったあと、少しお話をすることもできた。先生が退職された後、ヴァイオリンの生徒の中でも大人の生徒がずいぶん減って、残っているのは私だけになったことも、すでにお聞き及びのようだ。その私はと言えば、先生が退職された後、アマオケに入ったり、スタジオの発表会ではバンドをやったりと、ヴァイオリンでずいぶん楽しませてもらっている。これも本当に先生のおかげだ。先生も、私がこうして続けていることを喜んでくださっているように思えた。最後に
頑張ってくださいね、
と励まされた。頑張って上手になってくださいね、ということではなくて、きっと頑張って続けてくださいね、ということだと思う。そりゃもちろん、上手に弾けるようになれば、「先生のご指導の賜物です」といって感謝の気持ちを伝えられるのだが、私にできるのは続けることと楽しむことぐらいしかない。これからもずっと続けていこうという気持ちを確かめることができた音楽会だった。

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