自分の不注意で弓を折って1ヶ月ほどになる。先日入れていただいたばかりのアンサンブルのメンバーの方の厚意に甘えて、ずっと弓をお借りしたままだ。
昨日、いつもお世話になっている工房から連絡があり、何本か候補になるような弓をご用意しましたよ、とのことだった。早速見に行って試奏させていただいた。
まず、外観から。
弓の材料になる木材は希少なものらしく、廉価版となると、節があったり、年輪が真っ直ぐになっていないような粗悪な材料を使っているものもあるそうだ。ニスが塗られるとわかりにくいが、今回のものはそういったものはない。
もともと真っ直ぐな木を熱加工で反らしていくのだが、その時に強度を高めるために、断面が丸ではなく、鉛筆のように6角形だとか8角形になっているものがある。以前使っていたのはそうだった。それを買ったときは、比較的程度の良くない材料でそれなりのものを作るための工夫だと聞かされて、納得ずくで買ったものだ。今回は、どれも丸い断面のものだ。
サムグリップやラッピング、ねじの素材なども、いろいろとあるようだが、今回はラッピングがそこそこのランクのようだ。鍍金されているようなものだと、使っているうちに鍍金が剥げ、錆びてくるものもある。鍍金のものは売られているときに上からビニールか何かで覆って売っているらしいが、今回のものはどれも覆われてはいなかった。音には直接関係ないが、高価なものは毛箱の下の部分にべっ甲が嵌められていたりして、高級感があるのだが、こんかいはそういうのはなかった。
さて持ってみる。
ヴィオラ弓はヴァイオリン弓よりも重い。重いなりにどれも同じぐらいの重さなのだが、重心の違いで多く感じたり軽く感じたりする。持った感じで、「あ、重い」とか、「あ、軽い」とか、感覚的に思うのだが、実際に弓のどこかを軽く支えてシーソーのように重心を取って見ると一目瞭然。重心が遠いものは重く感じる。
いよいよ弾いてみる。
これが不思議なのだが、同じ楽器を同じように弾いているのに、音も違うし、弾く感覚も違う。深みというか幅というか、そういう音を出してくれる弓もあれば、華やかな音を出してくれる弓もある。弾く感覚は何とも表現できないのだが、いままで使っていた弓と同じようなものもあれば、明らかに違うものもある。明らかに違うもので、明らかに使いやすければ、それを採用してもいいのだが、どっちかというとそういうのは違和感として身体に伝わる。やはりこういう道具は使い慣れたものがいちばんなのだ。
そんな吟味の上、用意していただいた中から1本に候補を絞った。値段を聞かずに選んだのだが、いちばん高いものだった。ここであまりおカネの話もしたくはないのだが、今回用意していただいたものは全部、思っていた予算より高いものばかり。月賦で・・・などといった話もあったのだが、いま出せないものなら月賦でも払えない。いや、出せない訳ではないのだが、あとは自分をどう納得させるかの問題なので、その日は買わずに弓をお借りすることにした。
これよりも安くてこれよりもいいものがない、ということを自分で確かめたうえで買おうと思う。
けっしてこれよりも高い弓は見ない。絶対に見ない。見てはいけないと心に誓いつつ、無理を言ってお借りした。
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