2023年8月25日金曜日

ラター 「古風な組曲」

 定期演奏会の曲紹介シリーズ。いよいよ最後の曲です。今回の定期演奏会で演奏する曲の作曲者の中で、唯一、現在もご活躍中の方の作品です。ご自身のWebサイトもお持ちですので、インターネットから比較的信頼性の高い情報を収集できるのですが、いろいろ苦労もしました。たぶん、今回の曲紹介の中でいちばん苦労したと思います。

ラター 「古風な組曲」
John RUTTER. “Suite Antique”

 ジョン・ラター(John Milford Rutter. 1945.9.24 - )は、イギリスで活躍する作曲家。作曲だけでなく、編曲や指揮など、いまなお精力的に活動している現役の音楽家です。「古風な組曲」は、ロンドンの西、ウィンザー・メイデンヘッド王室特別区で2年に一度開催される「クッカム音楽祭」のために、彼が1979年に作曲したものです。この年の音楽祭では、バッハのブランデンブルク協奏曲第5番が演奏されました。彼は、バッハへのオマージュとして、それぞれの曲がブランデンブルク協奏曲第5番と同じ楽団編成で演奏され、ブランデンブルク協奏曲第5番と同じようにフルートとハープシコードの絶妙な掛け合いが魅力的な、6曲で構成されたこの組曲を、この音楽祭で初演しました。

 そんな中でも、2曲目のOstinatoは、バッハの曲とはずいぶん異なる様相のリズミカルな曲です。4曲目のWaltzは、彼のWebサイトによると、ジャズの巨匠、リチャード・ロジャース(Richard Charles Rodgers. 1902.6.28 – 1979.12.30)のスタイルを取り入れているとか。しかし、全体的にはバッハの時代へのインスピレーションをはっきりと聴き取ることが出来る構成となっていると言われています。バッハがブランデンブルク協奏曲を進呈したのは1721年。300年の時空を超えて、バッハを現代に蘇えさせる壮大なタイム・トラベルをお楽しみください。

John Rutterのサイトより
John Rutter biography https://johnrutter.com/useful-info/press-resources
Suite Antique https://johnrutter.com/music/printed-music/catalogue/suite-antique
いずれも2023.8.15アクセス

Oxford University Press. 『John Rutter Suite Antique Full Score』

edy musicサイトより
【プーランクから】現代の作曲家も古楽器がお好き?チェンバロ編【フランセまで】
https://edyclassic.com/2688/
【冬に聴きたい】「ほっこり」クラシック【愛らしいディーリアスの佳作】
https://edyclassic.com/2480/
いずれも2023.8.15アクセス

Wellcome to Cookham.comより

Cookham Festival 2019 http://www.cookham.com/cookhamfestival2019/index.html
What is the Cookham Festival?
http://www.cookham.com/cookhamfestival2019/PDFs/WhatIsTheCookhamFestival.pdf
いずれも2023.8.15アクセス

モリタブさんのブログ「遊び心満載 初心者向けジャズ/大人の趣味/サラリーマンブログ」より
リチャード・ロジャースの代表曲・ヒット曲をジャズ初心者にも分かりやすく説明します!
https://moritablog.com/jazz-richard-charles-rodgers
2023.8.15アクセス

Wikipedia(日本語版)より
ジョン・ラター https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・ラター

(→)John Rutter氏のサイト
https://johnrutter.com/useful-info/press-resourcesより


 インターネット上に、ご本人がアップされている情報も含めて、さまざまな情報があるのですが、ほとんどが英語。Google翻訳さんのお世話にずいぶんなりました。

 何に苦労したかというと、作曲者ご本人は「ブランデンブルク協奏曲第5番へのオマージュ」と仰っているのですが、私のような素人が弾いていても、ブランデンブルク協奏曲のイメージがなかなか聴き取れないこと。リチャード・ロジャースの方がなんだかしっくりきます。ことさらにブランデンブルク協奏曲のことばかりを書くと、なんだか、自分が思っていないことを、他人の言葉を借りてきてそれらしく書いているような、空々しい曲紹介になってしまう。それじゃたぶん、いっしょに演奏しているオケのみなさんもそんなふうに感じると思うし、その空々しい感じが客席にも伝わってしまう。でもご本人はブランデンブルク協奏曲のオマージュだと仰っているし、他のレビューサイトなどを見てもブランデンブルク協奏曲に言及している。そんなわけで、空々しくならないギリギリのところで書いています。

 さてさて、オケのみなさんの評価は如何に?
 評判がわるければ、当日のプログラムでは全面的に書き換わっているかもしれません。

2023年8月24日木曜日

H. PARRY. 弦楽三重奏のためのふたつの間奏曲

 定期演奏会の曲紹介シリーズ。いよいよ終盤です。今日のこの曲と、残りの1曲は、結構な苦労をしました。図書館に行っても、適当な情報がないんです。いちおう、作曲者のプロフィールぐらいは「音楽事典」とかなんとかという本で調べられるのですが、モーツアルトのように、作曲した作品のひとつひとつについて解説しているような本はありませんし、女性関係も分かりません。いきおいネットの情報に頼るしかなかったのですが、3人の娘の絵が見つかったところで「よし!」という感じになりました。


パリー 弦楽三重奏のためのふたつの間奏曲
C. Hubert H. PARRY. Tow Intermezzi for String Trio

 ヒューバート・パリー(Sir Charles Hubert Hastings Parry, 1848.2.27 – 1918.10.7)は、イギリスの作曲家で、音楽史に関する著書を多く著し、オックスフォード大学教授、王立音楽大学の学長も務めた音楽史の研究者でもありました。この「弦楽三重奏のためのふたつの間奏曲」は1886年、彼が38歳の頃に作られた曲と言われています。オケの指導をしていただいている先生から私たちに配られたこの曲の楽譜には「For Kitty, Margaret and Sue(キティ、マーガレット、スーのために)」と書き添えられています。この3人は、法律家で海軍書記官でもあったヴァーノン・ラシントン(Vernon Lushington. 1832.3.8 –1912.1.24)の娘たちです。この娘たちは、彼の妻で音楽家のジェーン・ラシントン(Jane Lushington)とともに、パリーに音楽の指導を受けていました。ジェーンと3人の娘の姿は、おそらくヴァーノン・ラシントンと親交のあった画家のアーサー・ヒューズ(Arthur Hughes. 1832.1.27 – 1915.12.22)の「Home Quartet. Mrs. Vernon Lushington with Daughters」と題された絵に描かれています。この絵が描かれたとき、キティは16歳、マーガレットは14歳、スーは13歳ぐらい。「弦楽三重奏のためのふたつの間奏曲」が作られる3年前です。開演前に右のQRコードからこの絵をご覧いただき、彼女たちが弾いているところを想像しながらお聴きください。

音楽之友社. 2008. 『新訂 標準音楽辞典 第二版』
Wikipedia(英語版)より
Hubert Parry(https://en.wikipedia.org/wiki/Hubert_Parry)
Vernon Lushington(https://en.wikipedia.org/wiki/Vernon_Lushington)
Susan Lushington(https://en.wikipedia.org/wiki/Susan_Lushington)
Arthur Hughes (artist) (https://en.wikipedia.org/wiki/Arthur_Hughes_(artist))
いずれも2023.8.15アクセス
IMSLP(International Music Score Library Project, 国際楽譜図書館プロジェクト)より
2 Intermezzi (Parry, Charles Hubert Hastings)
https://imslp.org/wiki/2_Intermezzi_(Parry%2C_Charles_Hubert_Hastings)
2023.8.15アクセス
Artworksサイト 「Home quartet. Mrs. Vernon Lushington with daughters」のページ
https://arthive.com/arthurhughes/works/558036~Home_quartet_Mrs_Vernon_Lushington_with_daughters
2023.8.15アクセス

 この3人の娘を紹介したいがために、ずいぶんいろんな人のことを書いて、ちょっと冗長な文章になっていますが、要は、この3人のために書かれた曲だということが言いたかった文章です。右の方は3人のお母さん。パリーは、この4人の音楽の先生でした。お父さんの知り合いの画家にこんな絵を描かせていますので、けっして怪しい関係ではなかったと思います。文春砲の出番はないようです。

 ちなみに「間奏曲」というのはあまりたいした意味がなくて、19世紀以降の自由な形式の小品に「即興曲」「奇想曲」「無言歌」などと同様に「間奏曲」というタイトルが付けられるようになったそうです(音楽之友社『音楽中辞典』)。

2023年8月23日水曜日

映画「オズの魔法使」より「虹の彼方に」

  定期演奏会の曲紹介シリーズ。昨日に引き続き、映画音楽からの小品です。マイ・フェア・レディは、正確にはブロードウェイ・ミュージカルに由来しますので、映画音楽と言えるかどうか…。

 細かいことはされおき、この時代の映画となると、相当な年配の方でも、実際にリアルタイムで映画をご覧になった方はほとんどおられません。けれど、世代に関係なくみなさんよくご存じの曲です。むしろ、映画音楽だということをご存じ出なかった方も多いのでは。私もそんな多数派のひとりでした。

映画「オズの魔法使」より
H.アーレン作曲 「虹の彼方に」
“Over the Rainbow”
from the Movie ”The Wizard of Oz” Composed by Harold ARLEN.

 1939年のアメリカ映画「オズの魔法使」の挿入歌。作曲したのはハロルド・アーレン(Harold Arlen. 1905.2.15 – 1986. 4.23)。14歳の少女ドロシーを演じるジュディ・ガーランド(Judy Garland. 1922.6.10 – 1969.6.22)が歌う曲です。

 カンザス州の田舎の農園の娘、ドロシーの周りで起こることは嫌なことばかり。もうこんなところではなくて、汽船でも列車でも行けないような、どこか遠くの、嫌なことのない世界に行きたい。虹の彼方にそんな世界があると歌うのがこの曲。竜巻に巻き込まれ、虹の彼方に飛ばされたドロシーが着いたのは、オズの魔法使がいる夢の世界。この世界が、今日、演奏する曲の中では、いちばん遠い場所かもしれません。

Wikipedia(日本語版)より
 「虹の彼方に」 https://ja.wikipedia.org/wiki/虹の彼方に
 「オズの魔法使」 https://ja.wikipedia.org/wiki/オズの魔法使
 「ハロルド・アーレン」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ハロルド・アーレン
 「ジュディ・ガーランド」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ジュディ・ガーランド
 いずれも2023.8.19アクセス

 これもWikipediaばかりですが、きちんと映画は観ています。映画の著作権は発表後70年とされますので、この映画は既にパブリックドメイン。モーツアルトの曲と同様に、二次創作者の同意さえあれば、ネットに公開できますので、アマゾンプライムでも無料で視聴できました。

 ところで、木星と虹の彼方はどちらが遠くか。

 この映画の「虹の彼方」は夢の中の世界ですから、きっと二度と行くことはできません。木星は、今世紀のうちに再び惑星探査機が近づくかもしれませんから、きっと虹の彼方の方が遠くでしょう。

2023年8月22日火曜日

ミュージカル「マイ フェア レディ」より「一晩中踊れたら」

 定期演奏会の曲紹介シリーズ。今回もいわゆる「小品」です。

 年配の方にはお馴染みの曲。私たちの世代だと、実際に映画や舞台を観た方は少ないと思いますが、曲を聴けば「あぁどっかで聴いたことがあるな」という曲です。

ミュージカル「マイ フェア レディ」より 
F.ロウ作曲 「一晩中踊れたら」
“I Could Have Danced All Night”
from the Musical “My Fair Lady” Composed by Frederick LOEWE.

 1956年のブロードウェイ・ミュージカル「マイ フェア レディ」の劇中で歌われた曲です。作曲したのはフレデリック・ロウ(Frederick Loewe. 1901.6.10 – 1988.2.14)。歌ったのは主演のジュリー・アンドリュース(Dame Julie Elizabeth Andrews. 1935.10.1 - )。1964年に、オードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn. 1929.5.4 – 1993.1.20)主演で映画化され、マーニ・ニクソン(Marni Nixon, 1930.2.22 – 2016.7.24)がヘップバーンの吹き替えで歌っています。

The rain in Spain stays mainly in the plain
(スペインの雨は主に平野に降る)

下町娘のイライザは、「スペイン」を「スパイン」としか発音できませんでしたが、彼女を社交界にデビューさせようとする言語学者のヘンリーの特訓を受けて、正しい発音を身につけていきます。やっと正しい発音が出来た日、ヘンリーの期待に応えられたことと、紳士・貴婦人の集う華やかな世界を想像して興奮したイライザが、今夜は眠れない、一晩中だって踊り明かせると歌うのがこの曲。

 聞き覚えのある曲がいくつも歌われる映画の中でも、この曲は、オープニングやエンディングでもながれるテーマ曲。背中の翼を拡げ、宮殿でも舞踏会でも、どこへでも飛んでいけそうな名曲です。

Wikipedia(日本語版)より
 「一晩中踊れたら」 https://ja.wikipedia.org/wiki/一晩中踊れたら
 「ジュリー・アンドリュース」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ジュリー・アンドリュース
 「フレデリック・ロウ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/フレデリック・ロウ
 「オードリー・ヘップバーン」 https://ja.wikipedia.org/wiki/オードリー・ヘップバーン
Wikipedia(英語版)より
 「Frederick Loewe」 https://en.wikipedia.org/wiki/Frederick_Loewe
いずれも、2023.8.19アクセス

 このシリーズ最初の記事で「Wikipediaですぐ分かるようなことは書かない」と言っておきながら、参考文献がWikipediaばかりになってしまいました。しかし、けっして手を抜いているわけではありません。この文章を書くために、オードリー・ヘップバーン主演の映画「マイ・フェア・レディ」は観ました。

 曲名の邦訳ですが、「踊り明かそう」と訳されているものもあり、オケのみなさんもそのように言っておられるのですが、Wikipediaの訳を採用しました。本番の日に配布されるプログラムでは別のタイトルになっているかもしれません。

2023年8月21日月曜日

ホルスト 組曲「惑星」より 「ジュピター」の主題

 定期演奏会の曲紹介シリーズ。今日からはいわゆる「小品」です。ホルストの「ジュピター」ですが、平原綾香が歌って有名になった主題の部分だけを弾きます。小品だからと言って、曲紹介の手を抜くことはありません。

ホルスト 組曲「惑星」より 「ジュピター」の主題
The Theme of “Jupiter, the Bringer of Jollity”
from the Suite “The Planets” Composed by Gustav HOLST.

 1979年、アメリカの惑星探査機「ボイジャー」1号、2号が相次いで木星に接近し、それまで私たちが想像すらすることのなかった写真を地球に送ってきました。写真は世界中に配信され、日本の新聞も、当時は珍しかったカラー写真を1面に掲載しました。アメリカ大統領も、石油利権で巨万の富を築く大富豪も、東洋のあまり裕福とは言えない家庭の少年も、同じ写真を見て、同じように興奮しました。

 グスターヴ・ホルスト(Gustav Holst. 1874.9.21 – 1934.5. 25)がこの曲を書いたのは1914年ごろ、正式に初演されたのは1920年。木星に関する科学的知見は限られたもので、もちろん写真もありません。彼がモチーフとしたのは神話や占星術、そして彼自身の想像力。21世紀になっても、私たちが木星についてイメージするのは、ボイジャーが撮影した写真と、ホルストのこの旋律でしょう。彼の想像力の翼は、夜空に輝く星にまで届いていたともいえます。

Wikipedia(日本語版)より
  • 「惑星 (組曲)」 https://ja.wikipedia.org/wiki/
  • 「グスターヴ・ホルスト」 https://ja.wikipedia.org/wiki/グスターヴ・ホルスト
  • 「ボイジャー計画」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ボイジャー計画

 インターネットで木星の画像を検索すると、ほんとうに鮮明な画像がいくつも見つかります。これ、ぜんぶボイジャーが地球に送ってきた画像なんです。いまから半世紀前ですよ。グランドキャニオンの画像とは訳が違うんです。でも音は聞こえません。グランドキャニオンなら、その場の空気を五感で感じることもできますが、それもできません。

 そういう意味で音楽は素晴らしい。こうして木星の「音」を感じることが出来るのですから。