この数ヶ月の間に、弓毛の交換、数回にわたる弦の交換、松脂のメンテなど、楽器のメンテナンスに随分、手間と費用を掛けてきた。どれも必要に迫られてやっているのだが、やってみていろいろ分かったことがある。
ひとことでいうと
メンテナンスはだいじ
ということに尽きるのだが、どう大事なのかが身をもって分かった。素人が勝手にそう思っているだけなので、実は違うぞ! ということもあるかもしれないが、きちんとメンテナンスしていない楽器だと、たぶん変な癖がついてしまうと思う。
もともと弾いていて、なんか弾き難さを感じていたのだが、実際に弾いた音を録音してみると、演歌のような「ため」と「こぶし」が気になる。先生曰く、「長い音を、最初から最後まで同じ音量、同じ音色で弾くのはなかなか難しい。」 改めてロングトーンの練習なんかをしてみるのだが、弓を返す時にグッと圧を掛けないと最初の音が出ない感じ。それを何とかしようと松脂を塗りたくっているせいか、常にギロギロとした音になる。
弓毛を換えて、弦を換えて、まったく別の楽器のように軽快に音が出るようになったのだが、まだ何となく弦の上で弓が滑るような感じがする。あとは松脂か、とおもって、使い込んで表面がざらざらになった松脂をライターで炙り、新品のような琥珀色半透明の滑らかな表面にして塗ってみると、最初はあまり違いが分からなかったけれど、そのうちに、いい感じに引っ掛かるようになってきた。
そして何度も弦が切れて、何度も交換すると、なんとなく交換前と交換直後の弾き心地の違いが分かってくる。交換してすぐのときは弦の上で弓が滑る。松脂をしっかり塗って弾き続けているうちに、だんだんと引っ掛かりがよくなってきた。
それでたぶんこうなんじゃないかなと思ったのだけど、弓毛に塗った松脂は、弾いているうちに弦の表面に擦りつけられて、それが摩擦の熱でいい感じに変質して、上手い具合に弦をコーティングし、そこにまだキューティクルが鱗のようにしっかりついている馬の尻尾に、琥珀色の松脂を塗って擦ることで、いい具合に音が出るのではないか。この弦の表面のコーティングの具合がポイントのような気がする。弾いた後でどれだけ丁寧に松脂を拭き取っても、弾き込んでいるうちにだんだんコーティングが厚くなり、本来の弦と弓毛が接しなくなってしまう。だけどコーティングがないのも駄目で、この塩梅がちょうどいいときが最高の音になるのではないか。
弦は、交換した直後はチューニングが難しく、いっかい合わせてもすぐに伸びてしって音程が下がる。交換から1週間ほどが経って、やっとそれもマシになってきて、練習の初めにチューニングすればその日はあまり目立って下がらないようになった。それでいつものようにロングトーンの練習をしてみるのだが、これが殊の外いい感じに弓を返すことができる。
これ、これ、この感じ
たぶん、弦は交換してから1週間とか10日目ぐらいが最高にいいような気がする。2日に1回ぐらいのペースで、1回1時間とかの練習時間だったら、という前提だけど。毎日何時間も弾く人なら、最初の日のうちに弦の表面に上手く松脂がコーティングされるのかもしれない。弓毛も最初は松脂の乗りがわるいというから、もし発表会とかのためにメンテするんだったら、1ヶ月前に弓毛の交換、その1週間後に弦の交換、その後1週間はチューニングとかに苦労して、そのあと2週間はベストコンディションで最後の仕上げ、なんて感じかな、なんてことを思った。
もちろん、メンテナンスのわるい楽器で練習すると変な癖が付くので、そうなる前に弓毛も弦も交換しないといけない。発表会が2年に1回だからといって、2年に1回、発表会前にメンテナンスするというのはちょっと駄目かも。