有名な『ヴィヴァルディの四季』から「秋」。これも私家蔵書にスコアがあって、その冒頭に解説文が書かれている。それによると、当時のイタリアでは、作曲された曲が2,3シーズンを越えて再演されることは稀で、聴衆の嗜好に応えて次々に作品を仕上げていくために、手稿譜は「覚え書き」ぐらいに扱われていたらしい。しかし、外国ではヴィヴァルディの名声は高く、パリやアムステルダムで多くのソナタや協奏曲が出版されたそうだ。
『四季』はマルツィン伯爵に献呈されたものがアムステルダムで出版されたもののようだ。マルツィン伯爵を調べていくと、おそらくハイドンが仕えていた「モルツィン伯爵」のことではないか、というところまで行き着いたのだが、それじゃこの曲はモルツィン伯爵に捧げたのかというとそうではなさそうだ。やはりピエタ修道院の娘たちのために書いたのだろうということで、無難に紹介文をまとめた。
ヴィヴァルディは、1703年9月、ベネチアにあった孤児院兼音楽学校オスペダーレ・デッラ・ピエタ(ピエタ養育院)のバイオリン教師となり、その後、逝去前年の1740年まで「ピエタ」との関係は断続的に続きました。そしてピエタの娘たちのために数多くの協奏曲、室内楽曲を作曲し、上演しました。『ヴィヴァルディの四季』として有名なこの曲は、1727年にアムステルダムで出版されたヴァイオリン協奏曲集『和声と創意への試み』に収録されたもので、楽譜に四季折々の情景を描写するソネット(イタリア民謡を原形とする14行の定型詩)が書き添えられています。演奏する「秋」には次のように書き添えられています(日本楽譜出版社の楽譜より)。
第1楽章 | ||
冒頭: | 村の若者達の踊りと歌: |
村人は踊りと歌で 実りの秋を祝う |
32小節目: | 酔っ払い: | バッカスの飲み物に紅潮し |
89小節目: | 酔っ払い男が眠る: | 若者は喜びの果てに、眠りにつく |
第2楽章 | ||
冒頭: | 眠る酔っ払い達: |
安らかで心地よい大気は 人々の歌と踊りを 終わりにさせる 皆を快い眠りの楽しみに 誘うのがこの季節 |
第3楽章 | ||
冒頭: | 狩: |
夜明けに狩人が 手に角笛と猟銃を持ち 犬をお供に狩に出る |
76小節目 | 逃げる獣: |
逃げる獣 狩人は追う |
82小節目: | 猟銃と犬: |
大きな猟銃の音と犬の追う声に 獣は驚き疲れ 傷つき怯え 逃げ惑い |
129小節目: | 逃げる獣は息絶える: | 追い詰められて息絶える |
参考文献
- 田島容子「ヴァイオリン協奏曲《四季》」. 日本楽譜出版社.『Kleine Partitur: Vivaldi: LE QUATTRO STAGIONI: Il Cimento dell!Armonia e dell'Ivenzione Op.8 No.1-4』
- "ビバルディ", 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-08-16)
- "ソネット", 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-08-16)
練習用音源
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