昨年は何度かアンサンブルのステージに載ったが、そのたびに大学オーケストラのメンバーの応援があった。その大学オケのひとつが定期演奏会をするというので出掛けた。うちの家から快速列車で約2時間、新幹線の駅でいうと5つ目(新幹線を使うと1時間と少しで行けるけどお値段は倍以上)の駅を降りると、目の前に世界遺産の立派なお城が見える。目的の大学は、そのお城の裏手の、名門旧制高校の校地にある。名門だけあって、校地にはいくつかの立派な建物が残っていて、そのうちのひとつである講堂が演奏会の会場になっている。
その講堂に近づくと、会場誘導をしている男子学生に声を掛けられた。みると、昨年、保育園の発表会で隣で弾いていた学生ではないか。覚えていてくれるのは嬉しいことだ。これだけでも楽しみにしていた甲斐があった。
名門校だけあって講堂も立派な造りだが、いわゆる「ホール」ではない。みなさんが通っておられた学校の講堂や体育館をイメージしてもらえればいい。入口の外側で上履きに履き替えて、ドアを1枚開ければすぐ客席。小学生なら体育座りで先生のお話を聞くところだが、今日はパイプ椅子が並べてあった。
ホールとの違いは窓があること。唱歌や童謡のメドレーがあったのだが、そのとき、冬の柔らかい日差しが2階の窓から射し込み、あるときはまるで里山の雑木林で木漏れ日を浴びているような、またあるときはヤシの実が流れ着く浜辺で波の音を聞いているような、そんな錯覚さえ覚える。
昨年、私がステージに載った定期演奏会では、ここから来てくれた学生さんのおかげで本当に演奏がしやすかった。ボウイングのモーションがきれいなのだ。だから、見ていると「次はこうくるな」というのがよくわかって、こっちの身体も自然と真似をして動く。その学生さんとは違う学生さんなのだが、ホントに芸術的なボウイングをしている学生がいた。腕だけではない。腰でボウイングをしているようだ。まるで魔法の杖のように、弓が意思を持って動いているのではないかとさえ思える。唱歌のメドレーの最後は「八木節」だったのだが、このときなどは、本当にお祭りのような弓の動きだった。
最初のステージは、ラターの弦楽組曲。
見ていただいた通り、弓の捌きが揃えば結構きれいだ。慣れた弓の捌きをすればかなりポイントが高くなる。
そして唱歌メドレー。
最後のステージはヴィヴァルディの「四季」。
この曲も、こうして外の気配を感じるところで聴くと新鮮だ。木々の緑は見えるし、実際には聞こえないが小鳥の声さえ聞こえそうな会場なのだ。朗読されたソネットのように「春がやってきた、小鳥は喜び囀りながら祝っている」という情景の中で聴いているようにさえ思える。
コンサートを聴くというのは、音だけ聞いているんじゃなくて、ステージの上の人とも他のお客さんとも、いろんなものを共有しているんだと思った。目に見えるものだけでなく、五感だけでもなく、本当にいろんなものを「体験」として感じ取ることなんだなと思う。
本当にいいコンサートだった。
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