気分を切り替えて、10月の定期演奏会モードにしていく。しばらく、このブログをお借りして(自分のブログなので、誰から借りる訳でもないが、お読みいただいているみなさんの目をお借りして)、曲の紹介をしていこうと思う。
まだ演奏順は決まっていないけれど、予想ではこれが最初のはず。
ヴィヴァルディ フルート協奏曲「海の嵐」 Antonio VIVALDI. Concerti per Flauto “La Tempesta di Mare” op.10-1. RV433. ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi, 1678.3.4 – 1741.7.28)が活躍したヴェネツィアは、地中海交易で栄えた商業都市。イタリアの東側、アドリア海の最奥部にある内海のラグーン(潟)の中にある島に作られた街です。交易に用いられたのは船。北欧に起源をもつ、丸みを帯びた船体の帆船、「ラウンドシップ」が多く用いられる中で、ヴェネツィアでは、ローマに起源をもつ「ガレー商船」と呼ばれる、オールで漕ぐ船が多く用いられていました。ガレー商船は、操船がしやすく、強い風の中でも思い通りに運航することが出来たと言われます。一方で、帆船は14世紀ごろから大型化が進み、排水量500トン級(ガレー商船は300トン級。初代うみのこ号の排水量は592トン)のものが造られるようになります。操船技術も発達し、横風や多少の逆風でも船を進めることが出来るようになり、大量の商品を効率的に運ぶことが出来るようになりました。 1728年に出版されたヴィヴァルディのフルート協奏曲の第1曲には『海の嵐』という標題が付けられています。こんな破局的で恐ろしい標題とは対照的に、とても軽快で明るい印象の曲です。海の嵐をものともしないガレー商船が、そして、満帆に風を受けるラウンドシップが、晴れ渡る地中海の大波をかきわけてを進む。ガレー商船の漕ぎ手が、富を求める商人が、巡礼の旅の聖職者が、まだ見ぬ異世界に心を躍らせて旅に出る。そんな印象の曲です。 サザナミのラグーンから大海原へ。今年の定期演奏会はこの曲で出帆します。 |
- 中平希 著. 2018. 『ヴェネツィアの歴史:海と陸の共和国』 創元社.
- ルカ・コルフィライ 著, 中山悦子 訳. 1996. 『図説 ヴェネツィア:「水の都」歴史散歩』 河出書房新社.
- 音楽之友社. 1986. 『ヴィヴァルディ フルート協奏曲「海の嵐」「夜」「ごしきひわ」』
- Wikipedia(日本語版)より 「アントニオ・ヴィヴァルディ」https://ja.wikipedia.org/wiki/アントニオ・ヴィヴァルディ 2023.8.18アクセス
Wikipediaも使うのですが、Wikipediaですぐ分かるようなことは書かない。クラシック音楽の好きな方にとっては、「急‐緩‐急の3楽章形式とリトルネロ形式は、ヴィヴァルディの協奏曲の典型的な形式で云々」などといった解説が受けるのかもしれないけれど、そういう「いかにも」という印象を受ける文章は書かない。そして何よりも自分がわかっていないことは書かない。そんなことを考えながら書いていると、ある意味では曲とは全然関係のないこんな文章になったのですが、自分としては、むしろこの紹介文を書きたいがためにこの曲を弾いているような、そんな感じです。
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