きのうに引き続き、定期演奏会で弾く曲の紹介。今日はモーツァルトです。
きのうのヴィヴァルディもそうですが、音楽好きのハイレベル・オーディエンスなら、私の書くような拙い曲紹介なんて読まなくても、モーツァルトのことなんてなんでもご存じのはず。むしろ、ちょっと興味はあるんだけど、というぐらいの方に如何に興味や関心を持っていただくかを考えて書いています。
モーツァルト ディヴェルティメント ヘ長調 この曲は1772年の初め、モーツァルトが16歳の誕生日を迎える前後に作曲されたと考えられています。当時、モーツァルトは、ザルツブルク宮廷楽団の副楽長だった父、レオポルトとともに、たびたびイタリア旅行をしています。1771年9月13日、ミラノのモーツァルトがザルツブルクにいる姉のナンネルに書いた手紙には、姉の友人であったW.フォン・メルク嬢という女性の名前が現れます。
「妃殿下さま」は、姉のナンネルを茶化しているのでしょう。「プレゼント」はおそらくキスのプレゼントと思われます。W.フォン・メルク嬢(アンナ・マリーア・バルバラ・フォン・メルク。通称 ヴァーベルル)は、モーツァルトの4歳年上。宮廷事務局長の令嬢。直接、手紙を書くのではなく、姉に恋の仲立ちをお願いしているのは、メアドの交換ができない当時の習慣でしょうか。 この曲の軽快な第1楽章は、まるでモーツァルトがW.フォン・メルク嬢を助手席に乗せてドライブに出かけているようです。当時クルマはありませんから、馬車に乗って野や森を駆けていたのかもしれません。第2楽章は、急にロマンティックな会話に展開。「ちょっ、ちょっとマジにならないで…」とはぐらかすW.フォン・メルク嬢に、「じゃ芝居でも観に行こう」と街に誘うモーツァルト。第3楽章は、軽快でありながらどこかコミカル。モーツァルトのチャラ男ぶりが垣間見えるようです。 さてさて、イタリアから帰ってきたモーツァルトとW.フォン・メルク嬢の関係に進展はあったのでしょうか。 |
- 高橋英郎. 『モーツァルトの手紙』. 小学館; 2007.
- 武石みどり, 大野由美子, 西川尚生, et al. 『モーツァルト全作品事典』. 音楽之友社; 2006.
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