2019年4月20日土曜日

ヘンデルのヴィオラ協奏曲

 毎年、季節限定で参加しているアンサンブルの方は、「働き方改革」とやらの関係で雲行きが怪しくなり、定期的に練習に通える可能性が限りなくなくなってしまった(前回の記事参照)。それならば、早めに気持ちを切り替えて、練習に精が出るような課題曲を見つけてこなければ…。

 ということで、これを練習することにした。


 これは、以前、このブログでも紹介した「数奇な音楽」のひとつ。G.F.ヘンデルと言えば18世紀の前半に活躍した音楽家だが、当時は作曲した作品が全部、出版されるわけでもないので、埋もれてしまった作品というものもないわけではない。実は、こんな協奏曲も作っていたことが、20世紀初頭にわかった。見つけ出したのは、サン=サースとともに「古楽器協会」という団体を設立し、バロック時代の音楽を研究したアンリ=カサドシュというヴィオラ奏者。歴史に名を留める数少ないヴィオラ奏者の一人だ。ところが、のちになって、これはどうやらカサドシュがヘンデルの作風に似せて作った贋作だということが分かり、歴史に名を遺したヴィオラ奏者は、贋作家として名を刻むことになった。

 それにしても、よく出来た贋作で、まさにヘンデルの作品と見紛う、バロック的な旋律だ。ただ、やはりヴィオラ奏者としていいところを見せたかったとみえて、技巧的にはバロックの域を超える超絶技巧も取り入れている。バロックなら、だいたい3ポジが弾ければたいがいは弾けるのだが、この曲の場合、7ポジぐらいまで使われる。楽譜を見ると半分ぐらいはト音記号だ。ハ音譜を見慣れた身には読みにくい。たぶん、バロック時代の楽器だったら、7ポジのところなんて指板がなかったのではないだろうか。

 そんなこともありつつ、これなら発表会映えもするし、いまから1年かければ、それなりのレベルにはなるだろう、などと思って練習を始め、発表会直前になってなんともならずに玉砕するという、いつものストーリーが始まった感じだ。

2019年4月13日土曜日

「働き方改革」とアンサンブル

 新年度が始まって、予定ではそろそろアンサンブルに合流して、9月の定期演奏会を目指して練習しようか、というところなのだが、ちょっと暗雲が立ち込めている。

 このところ続けて、春から秋にかけて参加し、冬の間は冬眠して、また春から合流するという非正規団員をしているアンサンブルは、会社から電車で2時間ほどのところに練習会場がある。練習は毎週木曜日の7時~9時30分。地理的にはかなりビハインドがある。それに、会社の近くは、東京の山手線ほどではないにしても、1時間に4本とか5本とかの間隔で電車があるのだが、練習会場の最寄り駅は1時間に1本のローカル私鉄。団員の人に聞いても、ほとんどの人はこの電車には乗らず、遠出をするときはクルマで行くか、最寄りのJR駅までクルマで送ってもらう、というのだから、便数が増えるはずもない。
 初めて練習に参加した年は、定時ダッシュで駅まで行くと、2回の乗り換えで7時半には練習会場に着けるという神接続があったのだが、それがダイヤ改正でなくなってしまい、練習に参加できなくなった。しかし、こんどはうちの会社が、年次有給休暇のうち5日間は強制取得だ、などという気の利いたことを言いだしたので、その5日間を1時間単位に小分けして、毎週木曜日は早帰りという必殺技を使い、練習に参加していた。

 ところが、

 働き方改革だかなんだかで導入された国の有給休暇強制取得制度が、時間単位の有給休暇をこの強制取得分に参入することを許していない。もちろん、うちの会社の制度として時間単位で有給休暇を取得することはできるので、毎週木曜日に1時間の休みをもらったうえに、それとは別の5日間を有給休暇にすることはできるのだが、こういう有給休暇も強制的だからこそ取れるものであって、それとは関係なしに、「毎週木曜日は1時間早く帰るから、あとはよろしくね」とヴィオラ担いで帰れるほど恵まれた会社ではない。

 週に1回、時間休をとって英会話教室に通うとか、スポーツジムに通うとか、そういうのも「働き方改革」としては「あり」だと思うのだけど、役所的には駄目らしい。

『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』
2019.3,厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdfp.20 「Q3」

 さて、どうしたものか。
 いまレッスンでみてもらっているのも、今年の定期演奏家で演奏する予定の曲だし、その曲がホ短調だから、セヴシックもホ短調にアレンジしたり、音階練習もホ短調でやっているのに、その前提が崩れてしまう。このあと、定期演奏会の曲が次々に決まってきたら、それを順番にみてもらおうとか、また去年みたいにその曲紹介を書こうとか、いろいろ思っていた計画が、どれも変更になってしまうし、いや、それ以上に、老後はこのアンサンブルで楽しもうと思っていた人生設計まで変わってしまうんですけど…。