アンサンブルで「オペラ座の怪人」を弾くことになった。これがなかなかイケてるアレンジだ。アンサンブルを指導してくださっている先生によるアレンジなのだが、最初に弾いたときから
おぉ
と声が出るぐらいのカッコよさだった。
このアンサンブルの演奏会の曲目は、たいてい、バロック、古典派、ロマン派以降の割と新しいやつ、映画音楽という感じ。今回は、ヘンデル、モーツアルト、エルガー、そして「オペラ座の怪人」。前回はこの枠に「サウンド・オブ・ミュージック」が入っていた。その前は「チキチキバンバン」。映画の中では「古典派」といっていい。わりと年配の方が多いアンサンブルなので、「若いときに観にいった」映画なのだろう。「オペラ座の怪人」についていえば、私のイメージは劇団四季のミュージカルのイメージで、それも見に行ったことがないので、ストーリーもしらない。曲は何となく聞いたことがあるのだが、どういう場面で流れている曲なのかが分からないので、イメージが膨らんでいかない。
これは映画を観るしかない。
それで、図書館のヴィデオコーナーにこの映画がないか調べて観にいくことにした。
あった、あった。
だが、まてよ。モノクロって書いてある。そんな古い映画なのか。ま、ただで観られるものに文句も言うまい。ディスクをデッキに入れて再生。まず淀川長治さんの解説。おぉ懐かしい。図書館で観ると、こういうのもなんかアカデミックに見える。淀さんの説明ではサイレント映画だということだ。
サイレント・・・
じゃ音楽ないじゃん。
とは言っても乗りかけた船。ここで降りては図書館まで来たのが無駄になる。1時間半ほどの映画だったが、最後まで早送りすることなく全部観る。
音楽とは関係ないが、サイレント映画というのは、それはそれで面白い。台詞も効果音もない。ときどき短い字幕で台詞が出てくる。
「幽霊が出るということはご存じないようですな」
とか、そんな字幕が出た次のシーンでは、それを聞かされた男二人が、一瞬顔を見合わせて「そんなもの出るわけないよ」と笑う。ここは台詞も笑い声もないから、大袈裟な仕草だけでそれが演じられる。テラス席で初めてその幽霊(英語の字幕ではPhantomとなっている。題名の邦訳に倣えば「怪人」と訳すところなのだが、字幕では「幽霊」と訳されていた)の後姿を見た時の、その男二人の驚きよう、恐怖、しかし思い直して「正体を暴いてやる」とばかりにもう一度テラス席に勇ましく入っていく様。これもみんなサイレントなのだが、まるで話している声が聞こえてきそうな演技だ。
エリックのクリスティーヌに対する猟奇的な愛情。そのクリスティーヌを助けるウラルの勇敢さ。淀さんの解説では、醜い容姿のエリックにも愛情が注がれているのだが、サイレント映画では「醜い男」=「悪者」という比較的単純なストーリーにまとめられているような感じだ。
これは、もうちょっと新しい映画を観るか、劇団四季のミュージカルを観にいくか、原作の小説を読むかしないとイメージが湧いてこない。
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