2017年8月26日土曜日
カツオブシムシ
定期演奏会が近づいてきたので、弓の毛替えをすることにした。本番が近づいてくると、
上手く弾けないのは
きっと弓毛の所為だ
とか
弦を換えれば
いい音が出るはずだ
とかそういうことを考えるのは私だけではないはずだ。
ところで、しばらくヴィオラばかりを弾いているので、ヴァイオリンのケースは開けられることがほとんどない。ところが、数ヶ月前に開けた時にある異変に気付いた。しばらく弾いていないのに、弓毛がずいぶん薄くなっていて、切れた毛が弓の両端からいくつもぶら下がっているのだ。しばらく弾いていないから、こんなふうに毛が切れることはないはずだ。普段、弾かないものではあるが、この状態で置いておくのは、なにか酷く粗末に扱っているような気がする。これはよくない。
そこで、ヴィオラ弓と一緒にヴァイオリン弓も毛替えをしてもらうことにした。
工房に持っていって職人さんにヴァイオリン弓を見せると、
あっ、カツオブシムシですね。これは。
と立ちどころに原因が判明。テントウムシの小さいような虫なのだが、幼虫の時に動物性の蛋白質を得るために、もともと馬の尻尾で出来ている弓毛を食べるのだそうだ。ケースの中に住み着いてどんどん増えるわけではない。成虫になるとどこかに飛んでいくという。小さな虫なので、弓毛の1本でも十分に成長するので、もし飼うとしたら(飼わないけど)、切れた弓毛の1本を食べさせておけばよいのだが、たまたまケースの中で卵からかえった幼虫は、いちばん食べ頃な弓毛の一部を食べて、その弓毛が切れたら、切れ端には見向きもせずに、その次に食べ頃な弓毛に食い付くというようなことを繰り返し、おかげで何本もの弓毛が切れてしまって毛が薄い状態になってしまったらしい。
変な防虫剤を入れると、こんどはニスを痛めてしまうことがあるらしい。「雛人形のようなデリケートなものに入れるものなら大丈夫かもしれないけれど…」ということなのだが、雛人形の方はほとんどが植物性のタンパク質なので、付く虫の種類は違うかも。
結局、そういう防虫対策はなにもしないまま。ヴァイオリン弓は当分、ヴィオラケースに入れておくことにした。
そのうち天日干しでもするのがいいのか・・・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒメマルカツオブシムシ
2017年8月15日火曜日
こどもの発表会
少し前になるが、いつもお世話になっているスタジオの発表会があった。大人の発表会は2年に1回しかなく、今年はOFFなのだが、こどもの発表会は毎年ある。自分の娘たちが卒業して以来、遠ざかっていたのだが、すぐ近くのホールでやっているので様子を見に行った。
プログラムを見て、まず、ヴァイオリンを弾く生徒が増えていることに気づく。以前は、ほとんどがピアノの生徒で、ヴァイオリンは3人ぐらい。先生が他所の教室や自宅で教えているこどもを連れてきたりしていた年もあったのだが、久しぶりに見た発表会では3人に1人ぐらいの割合でヴァイオリンの生徒さんがいる。
実際に演奏を聴いてみて、レベルが相当に上がっているのにも驚いた。発表はほぼ年齢順。あとの方になるほど年長で、演奏技術も上がっていくのだが、最初に発表した子でもけっして拙い演奏ではない。ボッケリーニのメヌエットを、失敗することなく最後まで弾き通した。マジャールの踊り、ユーモレスク、ゴゼックのガボット、バッハのガボット、ザイツのコンチェルト2番、バッハのブーレと、教本でおなじみの曲が次々に披露されるのだが、演奏の途中で明らかな失敗をする子はいない。なかには「聴かせる」という域の演奏をする子もいて、かなり聴き応えがあった。
まだ幼いこどももいるのだが、他の発表もしっかり聴いている様子で、会場全体が「晴れの日」という雰囲気になっている。
うーむ
いろんな意味でハードルが上がってしまった。
プログラムを見て、まず、ヴァイオリンを弾く生徒が増えていることに気づく。以前は、ほとんどがピアノの生徒で、ヴァイオリンは3人ぐらい。先生が他所の教室や自宅で教えているこどもを連れてきたりしていた年もあったのだが、久しぶりに見た発表会では3人に1人ぐらいの割合でヴァイオリンの生徒さんがいる。
実際に演奏を聴いてみて、レベルが相当に上がっているのにも驚いた。発表はほぼ年齢順。あとの方になるほど年長で、演奏技術も上がっていくのだが、最初に発表した子でもけっして拙い演奏ではない。ボッケリーニのメヌエットを、失敗することなく最後まで弾き通した。マジャールの踊り、ユーモレスク、ゴゼックのガボット、バッハのガボット、ザイツのコンチェルト2番、バッハのブーレと、教本でおなじみの曲が次々に披露されるのだが、演奏の途中で明らかな失敗をする子はいない。なかには「聴かせる」という域の演奏をする子もいて、かなり聴き応えがあった。
まだ幼いこどももいるのだが、他の発表もしっかり聴いている様子で、会場全体が「晴れの日」という雰囲気になっている。
うーむ
いろんな意味でハードルが上がってしまった。
2017年8月13日日曜日
オペラ座の怪人
アンサンブルで「オペラ座の怪人」を弾くことになった。これがなかなかイケてるアレンジだ。アンサンブルを指導してくださっている先生によるアレンジなのだが、最初に弾いたときから
おぉ
と声が出るぐらいのカッコよさだった。
このアンサンブルの演奏会の曲目は、たいてい、バロック、古典派、ロマン派以降の割と新しいやつ、映画音楽という感じ。今回は、ヘンデル、モーツアルト、エルガー、そして「オペラ座の怪人」。前回はこの枠に「サウンド・オブ・ミュージック」が入っていた。その前は「チキチキバンバン」。映画の中では「古典派」といっていい。わりと年配の方が多いアンサンブルなので、「若いときに観にいった」映画なのだろう。「オペラ座の怪人」についていえば、私のイメージは劇団四季のミュージカルのイメージで、それも見に行ったことがないので、ストーリーもしらない。曲は何となく聞いたことがあるのだが、どういう場面で流れている曲なのかが分からないので、イメージが膨らんでいかない。
これは映画を観るしかない。
それで、図書館のヴィデオコーナーにこの映画がないか調べて観にいくことにした。
あった、あった。
だが、まてよ。モノクロって書いてある。そんな古い映画なのか。ま、ただで観られるものに文句も言うまい。ディスクをデッキに入れて再生。まず淀川長治さんの解説。おぉ懐かしい。図書館で観ると、こういうのもなんかアカデミックに見える。淀さんの説明ではサイレント映画だということだ。
サイレント・・・
じゃ音楽ないじゃん。
とは言っても乗りかけた船。ここで降りては図書館まで来たのが無駄になる。1時間半ほどの映画だったが、最後まで早送りすることなく全部観る。
音楽とは関係ないが、サイレント映画というのは、それはそれで面白い。台詞も効果音もない。ときどき短い字幕で台詞が出てくる。
「幽霊が出るということはご存じないようですな」
とか、そんな字幕が出た次のシーンでは、それを聞かされた男二人が、一瞬顔を見合わせて「そんなもの出るわけないよ」と笑う。ここは台詞も笑い声もないから、大袈裟な仕草だけでそれが演じられる。テラス席で初めてその幽霊(英語の字幕ではPhantomとなっている。題名の邦訳に倣えば「怪人」と訳すところなのだが、字幕では「幽霊」と訳されていた)の後姿を見た時の、その男二人の驚きよう、恐怖、しかし思い直して「正体を暴いてやる」とばかりにもう一度テラス席に勇ましく入っていく様。これもみんなサイレントなのだが、まるで話している声が聞こえてきそうな演技だ。
エリックのクリスティーヌに対する猟奇的な愛情。そのクリスティーヌを助けるウラルの勇敢さ。淀さんの解説では、醜い容姿のエリックにも愛情が注がれているのだが、サイレント映画では「醜い男」=「悪者」という比較的単純なストーリーにまとめられているような感じだ。
これは、もうちょっと新しい映画を観るか、劇団四季のミュージカルを観にいくか、原作の小説を読むかしないとイメージが湧いてこない。
おぉ
と声が出るぐらいのカッコよさだった。
このアンサンブルの演奏会の曲目は、たいてい、バロック、古典派、ロマン派以降の割と新しいやつ、映画音楽という感じ。今回は、ヘンデル、モーツアルト、エルガー、そして「オペラ座の怪人」。前回はこの枠に「サウンド・オブ・ミュージック」が入っていた。その前は「チキチキバンバン」。映画の中では「古典派」といっていい。わりと年配の方が多いアンサンブルなので、「若いときに観にいった」映画なのだろう。「オペラ座の怪人」についていえば、私のイメージは劇団四季のミュージカルのイメージで、それも見に行ったことがないので、ストーリーもしらない。曲は何となく聞いたことがあるのだが、どういう場面で流れている曲なのかが分からないので、イメージが膨らんでいかない。
これは映画を観るしかない。
それで、図書館のヴィデオコーナーにこの映画がないか調べて観にいくことにした。
あった、あった。
だが、まてよ。モノクロって書いてある。そんな古い映画なのか。ま、ただで観られるものに文句も言うまい。ディスクをデッキに入れて再生。まず淀川長治さんの解説。おぉ懐かしい。図書館で観ると、こういうのもなんかアカデミックに見える。淀さんの説明ではサイレント映画だということだ。
サイレント・・・
じゃ音楽ないじゃん。
とは言っても乗りかけた船。ここで降りては図書館まで来たのが無駄になる。1時間半ほどの映画だったが、最後まで早送りすることなく全部観る。
音楽とは関係ないが、サイレント映画というのは、それはそれで面白い。台詞も効果音もない。ときどき短い字幕で台詞が出てくる。
「幽霊が出るということはご存じないようですな」
とか、そんな字幕が出た次のシーンでは、それを聞かされた男二人が、一瞬顔を見合わせて「そんなもの出るわけないよ」と笑う。ここは台詞も笑い声もないから、大袈裟な仕草だけでそれが演じられる。テラス席で初めてその幽霊(英語の字幕ではPhantomとなっている。題名の邦訳に倣えば「怪人」と訳すところなのだが、字幕では「幽霊」と訳されていた)の後姿を見た時の、その男二人の驚きよう、恐怖、しかし思い直して「正体を暴いてやる」とばかりにもう一度テラス席に勇ましく入っていく様。これもみんなサイレントなのだが、まるで話している声が聞こえてきそうな演技だ。
エリックのクリスティーヌに対する猟奇的な愛情。そのクリスティーヌを助けるウラルの勇敢さ。淀さんの解説では、醜い容姿のエリックにも愛情が注がれているのだが、サイレント映画では「醜い男」=「悪者」という比較的単純なストーリーにまとめられているような感じだ。
これは、もうちょっと新しい映画を観るか、劇団四季のミュージカルを観にいくか、原作の小説を読むかしないとイメージが湧いてこない。