少し前になるが、「オケ老人」という映画を見た。そこで初めて「降り番」という言葉を聞いた。一般的には、オーケストラで自分の楽器の出番がない曲でステージに乗らないことをそういうようだが、映画の中では、それぞれのパートでいちばん下手っぴな人はステージに乗せないというルールを作って、互いに競争させ、それでオケ全体のレベルを上げるというストーリーの中で使われていた。そんなことが実際にあるのかどうかは分からない。少なくともうちのアンサンブルにはそういうルールはないのだが、本番を来週に控えていまの状態では、もう降り番しかない。
前回の記事でも書いたが、ステージは前半と後半に分かれていて、前半は何とかなりそうだ。ちょっと問題だった紐の曲も、今週の練習ではなんとか付いていくことができたし、そりゃ完璧ではないが、それなりに弾いているふりぐらいはできる状態になった。練習の録音もしたので、あと1週間は前半の曲を集中的に練習して、なんとか本番を乗り切ろう。そんなわけで後半は降り番。ロビーコンサートだから、舞台袖ではなく、パイプ椅子が並んでいる客席の後ろの方からでも見学させてもらおう。いや、ホントに残念だが、どうやら毎年、前の年の定期演奏会の曲から選曲しているようなので、来年はちゃんと出られるだろう。今年はとりあえず様子見だ。
そんなわけで、今週の練習の時に
後半は降り番にします
といって、「しゃぁないなぁ」とかなんとか言われながら、肩の荷を半分降ろす予定だったのだが、反応が予想と違う。「なに言うてんのぉ。あかん、あかん」って言われて、「そんなん本人が無理って言うたはるんやし」などと助け船を出してくれる人もいない。おや、予定が違ってきたぞ。弾ける曲だけでいいはずだったのだが、それはどうも全部弾けるようになれということだったのか。
ここのアンサンブルは平均年齢も高く70を過ぎた方もおられる。以前はもっと高齢の方もおられて、70歳を超えると好きに弾いてもいいというルールがあったそうだ。いまは75歳以上になっているらしい。国民健康保険法の改正と関係あるのかどうかは分からないが、いまのところ該当者はいないが、あと数年でそこに至る人もいる。とにかく一定の年齢になると、途中でどこを弾いているかわからなくなって2~3小節先に終わってしまうのありらしい。
結構な高齢になってから、このアンサンブルで初めてヴァイオリンを弾いている人もいる。アンサンブル練習の前に初級者クラスがあって、1~2年はそこでレッスンを受けるのだが、それでもうステージに上げてしまう。「弾ける曲だけ」ということだが、これもどうも「魔法の言葉」のように思えてしまう。
初めて聞く話ばかりではないが、降り番の話をした日に限ってそういう話をされるというのは、たぶん「降り番は駄目よ」ということをやんわり仰っておられるのだろう。紛いなりにも10年以上つづけていて、練習すればそれなりには弾ける。上手な方ではないが、いちおうこのアンサンブルでは許容範囲に入っているのだろう。その私が「完成していないので降ります」というと、乗りにくい人もいるかもしれないし、それはこのアンサンブルのポリシーに合わないのだろう。
最近、レッスンの方もアンサンブルの曲ばかり。レッスンはレッスン、アンサンブルはアンサンブルと分けるほどこっちに余裕がない。今日は朝から3時間ほどカラオケボックスで後半の曲を練習して、午後のレッスンで見てもらった。先生曰く
いまから1週間で
この曲が弾けるように練習するか、
どうやって気づかれないようにいなくなるかを考えるか、
どっちかですね。
おうそうか。その手があったか。アンサンブルのある街は忍者の里にも近い。次の練習は演奏の練習よりも忍術の練習にするべきか。
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