平日の会社帰りに楽器店に寄り、出された弓を工房で借りている弓と弾き比べる。楽器店のものの方がよいと思ったのだが、ひとまず結論は出さずに検討することにした。
こうして迎えた週末。
工房に申し訳ないと思いつつ、もう一度、楽器店のものを弾いてみようと店を訪ねる。たまたまオールドヴァイオリンの展示会をしていて、試奏をする人も何人かおられるという状況。前回は店のフロアで試奏したのだが、この日は試奏室を宛がわれた。試奏室で弾くとまた感じが変わる。前回よりも発音がはっきりしてくる感じがする。しかし、それは工房の弓も同じ。その条件でもう一度弾き比べてみて、また悩む。前回と同じ、フロアでも弾いてみた。やはり楽器店のものがいい。
まだ悩む。
もともとヴィオラ弓なんてそんなにストックされているものではない。予算を言えば、その店の中ではもう他に選択肢はないのだ。
他の店も見てみるか…
もう、工房の弓は候補ではなくなった。しかし、まだここで迷いが出て、いったん保留のうえ店を後にする。
商店街でたい焼きを買って小腹を満たす(こんな時になぜたい焼きなのか)。
近くにある小さなお寺の境内で心を鎮める(たまたま腰掛けるところがあったからなんだが)。
CDや楽譜を物色する(このときは弓のことばっかり考えていた)。
きっと他の店に行っても、こんなふうに悩むばかりで結論なんて出ないだろう。今日は工房さんの厚意で弓を借りているが、大手の楽器店ではそうもいかない。モノがない状態で比較するというのは、弾く環境の違いだとか自分の記憶という不確定要素が加わるから、ますます選択が難しくなる。
そろそろ決め時か
店に引き返す。
もう試奏は必要でない。
購入の旨を伝えてクレジットカードを差し出す。
こうして新しい弓がヴィオラケースの中に納まった。
そして工房から借りていた弓を返さないといけないのだが、なんだかデートの約束をしていたのに他のカノジョとのデートを理由にそれを断るみたいな感じで申し訳がない。実生活ではそんな経験がないので、そういうときの気持ちをどう表現すればいいのか想像もつかないのだが…。
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