音楽用語というのはイタリア語が多い。どうやら現在に続く楽典が確立したのがルネサンスの頃のイタリアだったからのようだ。五線紙に音符を並べて表記する楽譜は、もともとは西洋から始まったものとはいえ、いまや世界共通語。読めるかどうかは怪しいが、これを読むのに言葉の違いが障壁になることはない。しかし、その楽譜のところどころに書かれている、おそらくイタリア語と思しきアルファベットの意味はあまりわからず、ほとんど無視していることが多い。
さてさて、バッハのドッペルの最初に書かれている「Vivace」。速度記号としては、Allegroより速く、Prestよりは遅いぐらいのようだ。これまで八分音符が96ぐらい、つまり四分音符にすると48ぐらいで練習していたのだが、そんなもんではない。
数ケ月前までのレッスンでは、メトロノームなんて関係なしに、とにかく弾けるところは速く、弾けないところも出来るだけ速く、というような弾き方をしているのを注意され、いちばん弾けないところがちゃんと弾ける速さで練習しましょう、ということになった。それでこの速さで練習していたのだが、それでも弾けない。
そこでネットに載っていた練習用の動画を1/2の速さで再生して練習するようにした。八分音符が80ぐらいの速さだ。それで前回のレッスンで先生に聴いてもらったのだが、最初の4小節を弾く前に、遅すぎると呆れられた。
この出来のわるい生徒を前に、先生もお悩みの様子で、ゆっくりでは練習にならないと仰ったり、だけどまずはゆっくりから練習しないといけないと仰ったり、結局、速度に関してはどうしたものか決めあぐねておられるようだった。
先日、このドッペルを合わせる機会があって、合わせるのだから自分の都合ばかりも言っていられないし、なんとか八分音符で96ぐらいを目途に頑張ってみたのだが、そこで相方が仰るには、「Vivaceでしょ」とのこと。とにかく闘いを挑むような感じで速く弾くという。
そんなのできるわけないよ
と思いながらやってみると、これが意外と面白い。出来ないところは頭の中で拍だけ数えたり、とりあえず拍の頭だけを合わせるようにしたりなど、とても「ちゃんと弾けている」感じではないが、とにかく面白い。いままでこの曲を弾いていて、こんなに面白いと思ったことがない。ニ短調だし、バッハだし、重々しい旋律なんだけど、そんなことは関係なくて、ものすごく楽しい曲になる。これは新しい発見だ。
それ以来、四分音符60、八分音符換算で120ぐらいにいきなりスピードアップした練習が始まった。
昨日のレッスンでも、この速さでは弾けないところは何箇所かあって、そこはスピードダウンしてしまうところを指摘はされたのだが、四分音符60で練習していることについては、当分、その速さで弾けることを目指して、その速さで練習してきてください、ということになった。
イタリア語のVivaceというのは、活発に、活気があるように、賑やかに、ということらしい。メロディラインは結構重々しいのだが、案外バッハも、この曲は賑やかに楽しく弾くことを意図していたのかもしれない。
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