2023年6月15日木曜日

続・コンテクストの濃い曲

 前の記事の続きと言えば続き。別の話題と言えば別の話題なのだが、秋の定期演奏会では、オードリー・ヘップバーン主演のミュージカル映画「My Fair Lady」の主題歌を弾くことになっている。アマオケのメンバーや、このアマオケの演奏会を聴きに来てくださる主力層の世代にとっては、リアルタイムで観た映画。やはりコンテクストの濃い曲だ。比較的簡単な曲だ、と侮ってかかる訳にはいかない。映画のストーリーだとか、時代背景だとか、主演のオードリー・ヘップバーンのことだとか、この曲を聴いた人がどんなイメージを思い浮かべるのか、何をこの曲に重ねるのか、よく知って弾かないと、聴く人をがっかりさせてしまう。私の世代にはなかなか難しい選曲だといえる。

 この映画は、ラヴ・コメディとして紹介されることが多いのだが、私の印象として、ヘンリーを演じたレックス・ハリソンが56歳とあっては、ちょっと設定に無理があるような感じがする。オードリー・ヘップバーンが演じる下町娘のイライザが、女性差別者で独身主義者で、階級社会を肯定する保守主義者でもあるヘンリーの心を開いていくというストーリーなのだが、イライザが上品な言葉遣いを覚えることで階級の階段を昇っていくというストーリーが前面にあるので、女性のサクセスストーリーのような印象を受ける。白雪姫やシンデレラの世界観でいえば、イライザが、上流社会の御曹司であるフレディと結ばれてハッピーエンドなのだが、そうはならない。フレディは最後まで袖にされ、結局、イライザはヘンリーと結ばれる。確かに、白雪姫やシンデレラとは異なる世界観が示されてはいるのだが、結局、女性は誰かと結ばれることでしか幸福になれない、というところが1960年代、日本でいうと昭和の限界かもしれない。いまなら、イライザはヘンリーを見捨てて、花屋を営み、自分目当てに店にやってくるフレディを袖にしながら、平凡だけれど自立した人生を歩んでいく、というサクセスストーリーになったのかもしれない。

 こう考えると、コンテクストの濃い曲を弾くのはなかなか難しい。いっしょに演奏する方、聴きに来てくださる方とコンテクストを共有しながら弾いたときに、はじめて世界観を共有できるのだが、世代が違うとこうまで世界観は違うのか。

 ひるがえって、エヴァンゲリオン世代から見て宇宙戦艦ヤマトの世界観はどう見えるのか。あるいは、私たちの世代は「鬼滅の刃」や「ワンピース」の世界観を共有できるのか。

 なかなか音楽は深い。

2023年6月10日土曜日

コンテクストの濃い曲

 スタジオの発表会が8月にあることが決まったので、まったくジャンルの違う楽器を弾いている中年男性3人が、なにか「出し物」をしようということで、曲を物色。結局「宇宙戦艦ヤマト」を弾くことになった。主旋律は誰かに偏らないように振り分けたのだが、ちょうど

必ずここへ 帰ってくると

のところがヴィオラになった。

 私たちの世代にはすっかりお馴染みの曲で、インストゥルメンタルで聴いていても、頭の中では歌詞が重なってくる。弾くときにイメージが付きやすい反面、イメージ通りに弾けない時にダメージも大きい。

 「宇宙戦艦ヤマト」というのは、私が小学生の時に、夕方の5時ぐらいから、うちの近所では10チャンネルで放送されていたアニメーション番組で、たいていの男の子は、放送のある日はさっさと家に帰ってテレビの前に釘付けだった。ガミラス星人という悪い宇宙人が地球に爆弾をいっぱい落して、おかげで地表はすっかり放射能で汚染され、もうあと1年で人類は滅亡だ、という時に、はるか宇宙のかなた、イスカンダルという星から、うちの星に地球を救う装置がありますから取りに来てください、というメッセージが届いて、それを信じて、宇宙戦艦ヤマトで戦いながらイスカンダルまで行って帰ってくる、というお話し。

 だから、「必ずここへ帰ってくる」という歌詞は、めっさ大事なところ。

 力強く、自信をもって、迷いなく弾きたいところなのだが、これがなかなかうまくいかない。「ララレーファミドレー」なので、ララは開放弦に任せてセカンドポジションに上がり、002ー4312ー としたいところなのだが、セカンドポジションというのは、どうも一筋縄でいかない。何となく音程が不安定で、

本当に帰ってくるの?

といいたくなる。「走れメロス」でも、もっと自信をもって「必ず帰ってくる」と言っているはずだが、それ以上に頼りない。

自分たちだけ、イスカンダルに逃げて、そこで生き残るつもりなんじゃないの?

という雰囲気。もはや「宇宙戦艦ヤマト」の世界観がボロボロになってしまう。これだから、コンテクストの濃い曲はやりにくい。泣き言を言っていても仕方がないので、ちゃんと信じてもらえるように弾くしかないのだが。

2023年5月27日土曜日

踊り明かそう

1964年公開 オードリーヘップバーン主演のミュージカル映画「My Fair Lady」

海外へ行くなら、この映画で、ヘップバーンといっしょに英語の発音練習をするのはいかが?

The rain in Spain stays mainly in the plain

ヘップバーンが演じる下町娘のイライザは、「スペイン」を「スパイン」としか発音できなかったが、彼女を社交界にデビューさせようとする言語学者のヘンリーの特訓を受けて、正しい発音を身につけていく。やっと発音が出来た日、ヘンリーの期待に応えられたことと、紳士・貴婦人の集う華やかな世界を想像して興奮したイライザが、今夜は眠れない、一晩中だって踊り明かせると歌うのがこの曲。

聞き覚えのある曲がいくつも歌われる映画の中でも、この曲は、オープニングやエンディングでもながれるテーマ曲。背中の翼を拡げ、宮殿でも舞踏会でも、どこへでも飛んでいけそうな名曲です。

秋の定期演奏会で演奏予定。

2023年5月21日日曜日

レッスンの本気化

 8月の発表会で、弦カルの発表ができないという事態に備えて、ソロの発表のための曲を用意しておくということで、テレマンのヴィオラコンチェルト第2楽章にレッスンを付けていただくことになった。先週に引き続きのレッスン。あまり練習時間は確保できていないが、テンポの方は順調に上がってきて、ほぼオンスピードになっている。

 しかし…

 もう発表会まであと1ヶ月というところなら、先生も細かいことを仰らないのだが、こうして出来上がってくると、細かな、しかし大切なところに指導が入り始める。レッスンが「本気」になってきたような気がする。

 先週のところでは、ファにシャープが付くところとか、ドにシャープが付くところを、きちんと、ナチュラルのファやドと区別して弾きましょう、というご指導だったので、その点は注意をしていったのだが、それがチャープに聞こえない、と仰る。その音に来た時に演奏を止めてチューナーを確認すると、確かにシャープが付いているのだが、そうは聞こえない。その原因は「ミ」だという。例えば出だしのこのフレーズ。

ソシレソー #ファミレミ#ファソ ラソ#ファミレドー シラシ

なのだが、最初の「#ファ」を高めにとったときに、つられて次の「ミ」も高くなっているので、ファにシャープが付いているように聞こえないというのだ。いままでの自分の経験でいうと、かなり意識的に「ミ」を低めにとっていい加減。先生が

そうです。その音です。

と仰ったときは、確かに明るい音階になっているように聞こえる。これを聞き分けないといけないのか。

 ほかにも、このフレーズの後半。

ドラ シソ ラ#ファ ソミ ラ#ファ シ#レ

 G線とD線を交互に弾かないとダメなのだが、そのとき、G線で押さえた指を完全に離すのではなく、D線を弾いている間にG線からD線にスライドさせて、予め押さえておく。

 どっちもファーストポジションで弾いているフレーズだ。

 ファーストポジションを侮ることなかれ。曲だと思わず、エチュードだったり、練習用の旋律だと思って何度も繰り返し、自然と体が動くようにしてしまわないと、とてもじゃないが、いちいち考えながら弾いている暇はない。

 それにしても、いまさら、なのだが、それもこれも、いつも発表会直前まで曲を通して最後まで弾くことが出来ず、こういう指導をしたくてもできなかったのだろうと思う。こういうご指導をいただいたというだけでも、心を入れ替えた甲斐があったというものだ。


2023年5月14日日曜日

こころを入れ替えて

 前回までのあらまし。

 8月の発表会に向けて準備をしていかないといけない。レッスンは、ソロのレッスンと、アンサンブル(弦カル)のレッスンがあるから、それぞれ何を発表するかを決めて練習。それと、レッスンとは直接関係ないのだが、他の楽器との変則三重奏を出し物的に。

 そうなると、ひとりで3つもステージを踏むことになるので、まずはソロを後回しにして、弦カルと変則三重奏を優先的に練習していたのだが、弦カルの他のメンバーが発表会に後ろ向きなので、これは直前になって「出ない」ということになるかも。変則三重奏はあくまでも「出し物」なので、これだけという訳にはいかない。

 ところが、ソロは後回しにしていたので、前回のレッスンではまったく箸にも棒にも掛からなくて、さてどうしたものか。

 それで、そのあと心を入れ替えて、弦カルを後回しにしてソロの曲の練習に励む。ヴィオラ弾きにはお馴染みのこの曲だ。

 前回のレッスンでは、とにかく、最後まで通して弾ける速さでしっかり通す、というご指導だったので、八分音符ひとつ88ぐらいの速さから練習。弾けないところは繰り返し練習する。そういえば、前の先生が、間違えたところは10回続けて間違いなく弾けるようになるまで繰り返すんだということを仰っていたなぁ、と思い出して、そういうつもりで練習する。ただ単に繰り返すだけだったら間違える練習をするだけなので、なんで間違えたのかを考えながら、とにかく3回続けて弾けるようになるまでは次のフレーズに行かない。そんなことをしてきた。回数は1/3以下になっているけど、趣旨は引き継いでいるつもり。

 なんとかそれが出来るようになってきて、速さを少しずつ上げていく。88から96へ。レッスンの前には112ぐらいまで。

 そんなこんなで臨んだレッスン。最初に通してみて、「だいぶ練習されてきましたね」とお褒めいただく。「発表会出られるかもしれませんね」。

やったー

 音程の甘いところを何箇所か指摘される。ト長調なので、基本的にファにはシャープが付くのだが、ところどころ移調してナチュラルになるところがある。そこがナチュラルに聞こえない。特にD線で弾くところ。A線で弾くドにシャープが付いているように聞こえるところがある。3ポジに上がってD線で弾くシにフラットが付いているように聞こえるところがある。いちおう通せているからこその指摘だと思う。いままでは、そんな音程以前の問題だった。

 動画では、最後はソロの方は所在なさげに立っておられるだけなのだが、手元の楽譜では、この部分でヴァイオリンと同じメロディを弾くようになっている。超絶ハイポジション炸裂なのだが、ここの音程が取れない。5ポジは指だけで音をとるのではなく、肘から取りに行く。練習の仕方もみっちりご指導いただいた。

 弦カルの発表が無事にできれば、次回の発表会では取り下げるかもしれないけれど、いずれ弾くかもしれない。もちろん、弦カルがキャンセルになればこの曲で8月の発表会に出ることになる。引き続き、こころを入れ替えて練習に励まなければ。