2022年11月1日火曜日

ふりがな

 楽譜を見て、初見でパッと弾けてしまう人は羨ましい。たとえば、「今度のコンサートのアンコール曲です」とか言われて配られた楽譜を見て、その曲を知っていても知らなくても弾けてしまう人。ゆっくりでも何でもいい。弾いてみて「あぁこの曲かぁ」なんて言ってみたいものだ。

 自分はというと、楽譜を渡されたら、まずYouTubeとかで音源を探して、あぁこういう曲か、とだいたいの全体像を掴んで、それから楽譜にフリガナを振っていく。最近はイタリア語で振ることが多い(つまり「ドレミ」ね)。その時にマイルールがあって、A線を弾くときは五線の上、D線を弾くときは五線の第3線と第5線の間、G線の時は第1線と第3線の間、C線の時は五線の下に書くと決めている。ドレミの書いてある位置でどの弦を弾くのかが直感的にわかるし、移弦するところがわかりやすい。ドレミを書くときは色のペンを使うのだが、その色も決まっている。スズキ教本でキラキラ星を弾くときの指の形を基本形として、この指の形で押さえるところは橙色。その半音下の場合は緑色、半音上の時は赤色。楽譜を読んで弾くというよりは、こうやって自分で書いたフリガナを読んでいる。五線の第3線と第5線の間に橙色で「ファ」と書かれていれば、それは「#ファ」でD線ファーストポジション2指。そんな変換を頭の中で直感的に行いながら弾いているのだが、ときどきその変換が追いつかないようなところが出てくると、「ドレミ」に加えて。あるいは「ドレミ」に代わって、指番号を書くようにする。これをアラビア語のフリガナと呼んでいる。書く位置や使うペンの色に関するルールはイタリア語の場合と同じ。

 さらに、休符明けの出るタイミングをとるために、他のパートの音型を書いたり、歌のある曲なら歌詞を書いたり、なんてことは青色のペンを使う。

 ハイレベルな楽団と違って、楽譜は一人ずつ譜面台を立てて見るようになっているので、どれだけ楽譜に書き込みをしようと、他人に迷惑がかかるわけではない。先日の定期演奏会では、アンコール曲の「カントリーロード」の楽譜が、何かの手違いでエキストラの方に渡っていなかったので、急遽、自分の楽譜をコピーして渡したのだが、なんともカラフルだ。アンコール曲は決まるのが遅いので、急いで練習しなければならないから、とにかくフリガナをすぐに書く。「ドレミ」と指番号の両方が書かれているところもあるし、カントリーロードの場合は歌詞まで書かれていた。もちろんカラーコピーして渡した。

 そんなことをやっておかないと、わりと簡単な曲さえも弾けない。自分で「情けないなぁ」といつも思うのだが、仕方がない。いつか、ある程度、上手な人と同じように、何もフリガナのないきれいな楽譜で弾けるようになりたいものだ、なんて思っているのだが、先般の定期演奏会で客演してくださったプロの先生のコメントがなかなかのご慧眼だった。

初心者の方々の指番号入りの譜面を拝見、ものすごい努力であの場に座っておられることにも、驚きました。

 自分が「情けないなぁ」と思って、いつか先生みたいにこんなことしなくても弾けるようになりたいと思いながらやっていることを、とてもポジティブに、それが何かとても尊いことのように捉えてコメントされていることに、ものすごく励まされた。プロの先生が仰るからこそ励みになる言葉なのだと思うが、これからはこのコメントをお守り代わりにして、エキストラの方にフリガナだらけの楽譜のコピーを渡すときも、堂々と、誇りをもって渡そうと思う。

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