2018年11月23日金曜日

裏打

 保育園の園児たちの発表会に賛助出演することになった。
 そこの保育園では、3歳だったか何歳だったか忘れたが、その学齢以上の園児全員にヴァイオリンを教えているという。その教えているのが、いつものアンサンブルの指導もしてくださっている先生なので、そのご縁で毎年、賛助出演をしているそうだ。

 今年はDA PUMPとKing & Princeをやるらしい。世間ではすっかりお馴染みの曲なのだが、おじさん世代には、まず、どんな歌なのか分かっておくところから始めないといけない。YOUTUBEにも動画がいっぱい上がっているけど、なかなかメロディが頭に入ってこない。特にKing & Princeは、歌を聴かせるというよりも、歌っているお兄さんをカッコよく見せるところに主眼があるので、楽器で演奏しようと思ってどんな歌なんだか聴こうと思っても、メロディ以外の情報が多くて歌がイメージに入ってこないのだ。しかし、そこはYOUTUBEの凄いところで、どっちの歌も「弾いてみた」「踊ってみた」系の動画は山ほど出てくる。踊るのはこの際どうでもよくて、弾いてみた系で、しかも楽譜が見られるものがあったので、まずは、これを繰り返し聴いて予習した。





 やっぱり、どっちの曲もリズムが難しそうだ。アレンジされた楽譜を見ると、とにかく裏打ばっかり。メトロノーム相手に練習するのだが、裏打ちしているつもりがいつの間にか表になっている。おじさんにはやはり難易度が高い。しかし、どうやら保育園の先生のリクエストらしいので、おじさんとしては俄然、やる気だけは出てくる。

2018年11月3日土曜日

日日是好日

 発表会と定期演奏会が終わって、何度目かのセヴシックに勤しんでいる。お経を唱えるようなつもりでやっているのだが、実際にはお経ほども上手くはできない。例えば、中指を人差し指にくっつけて小指を伸ばすと、薬指もつられて小指側に動いてしまうのを何とかしたいと思って、そこばかりを練習するのだが、何度練習しても目に見えた改善はない。小指がすぐに出せないのは、薬指を出す時に小指が小さく巻かれているからだと思って、小指を伸ばした状態で薬指を出す練習ばかりをするのだが、小指が伸ばせても抑える力が弱かったり、他の指が本来の場所からずれたり、なぜか知らないが体中を捻って表情まで歪めていたりと、やっぱりこれも上手くいかない。同じところを10回繰り返したところで1分ほどのものなので、毎日少しづつこつこつと続ければいいのだが、つい目先の成果がないことに心が折れて、5分もすると練習そのものに飽きてきてしまう。

 話は変わるが、亡くなった樹木希林さんの映画を観てきた。希林さんが演じるのは茶道の先生。黒木華と多部未華子が従姉妹同士で、ふたりで希林さんにお茶を習いに行くというもの。別に何か大きな事件が起こるわけではないのだが、20歳そこそこでお茶を習いだしてから30を超えるまでの日常が、時にはコミカルに、しかし淡々と描かれている。
 茶道の世界を描きながら、そこに見えたのは、希林さんの役者道というか、通ってこられた人生の道のように思えた。変化がないように見えて、日々、その前の日とはちがう毎日を生きていること、雨の日には雨の音を聴き、雪の日には雪を見て、真夏の暑さも、真冬の寒さも、五感で感じながら、いま、目の前にいる人と共有していく。茶道がそういう自然との対話であるように、演技は物語やその構成要素との対話であったり、その映画なりドラマなりを観る人との対話であったりするのではないかと思ったりした。

 世の中にはすぐわかるものと、すぐわからないものの2種類がある。
 すぐにわからないものは、長い時間を掛けて少しずつわかってくる。

 言葉ではなく、理屈でもなく、希林さんが心と身体で演じてこられたことが、この映画を通じて若い役者さんに引き継がれていくのを感じた。

 茶道の世界がそうであるように、ヴァイオリンの世界も「すぐにはわからないもの」何だと思う。言葉ではなく、理屈でもなく、長い時間を掛けて、心と身体で少しずつわかっていく。そのためにはまず「カタチ」。

 今日も修行だ。

 日日是修行