2018年9月13日木曜日

定期演奏会 曲紹介

定期演奏会まであと10日
練習の方は相変わらず牛のような歩みで、もはやこの調子では全部弾けそうな状況ではない。弾けないところは弾ける人に任せて、弾けるところだけ練習する、という方針に切り替える。だいぶ練習する箇所か少なくなった。

 そんなことで、演奏ではあまり貢献できないのは織り込み済みだったので、プログラムの曲紹介を買って出た。FACEBOOKでは1曲ずつ紹介しているが、こっちでは一挙に公開。自分でいうのもなんだが、結構うまくまとまっていると思う。



A.ヴィヴァルディ 
協奏曲 「Alla Rustica」 ト長調 作品51-4 
Concerto for Strings Orchestra “Alla Rustica” in G major
Op.51 No.4 : Antonio VIVALDI
Presto / Adagio / Allegro

ヴィヴァルディ自身が書いたこの曲の手書き譜は、イタリア・トリノの国立図書館にあります。そこには「Alla Rustica」(田舎風、農民風、田園風)という標題が付けられているのですが、それが具体的に何を意味しているのかは想像するしかありません。
ヴィヴァルディと言えば『四季』があまりにも有名ですが、彼は、このように作品に標題を付けて、さまざまな場面、風景、心情を描写する標題音楽の先駆けともいえるでしょう。この「Alla Rustica」の三連符(9/8拍子)のリズムには農民舞曲の印象が深く刻まれています。収穫を祝う秋の祭り、村の広場に集う人々、「年頃になったあの娘は誰と踊るんだい」、そんな会話まで聞こえてきそうです。
今年のサザナミ祭りはこの曲からスタートです。



H.パーセル 「Abdelazer」組曲 Z.570      
“Abdelazer or The Moor's Revenge” Suite  Z.570 : 
Henry PURCELL. 1695, London.
Overture / Rondeau / Aire / Aire / Menuett / Aire / Jigg / Hornpipe / Aire

パーセルは、長年に渡って英国王室に仕え、生涯のほとんどをロンドンで過ごしていたと考えられています。晩年、彼はいくつかの劇音楽をこの世に送り出しています。当時のイギリスには、オペラ歌手を養成する十分な環境がありませんでした。私たちが知っているオペラは、台詞のほとんどに曲がつけられていますが、パーセルの劇音楽は序曲、幕間曲、舞曲といくつかの歌曲に限られていました。「Abdelazer」は、彼が亡くなる1695年に作られた舞台劇で、彼は序曲といくつかの舞曲を残しています。
この頃の貴族たちは「たしなみ」として、何種類ものダンスのステップを習得しなければなりませんでした。舞踏会の成否が「お国」や「お家」の一大事にもつながるのですから無理もありません。音楽家の作る舞曲は、その決められたステップに合うように作られるもの。今日のように、音楽家の自由な発想で曲が作られ、それに合わせて踊りを考えるものではなかったようです。音楽家も「お国」や「お家」の一大事を背負っていたと言えるかもしれません。



W.A.モーツァルト 
ピアノ協奏曲 第12番イ長調 K.414   
Piano Concerto No.12 in A major, K.414 : 
Wolfgang Amadeus. MOZART, 1782, Wien.
Allegro / Andante / Allegretto

モーツアルトは生涯に27曲のピアノ協奏曲を書いています。そのうち本日演奏するこの曲を書いたのは彼が26歳のとき。生活の拠点をウィーンに移し、そこの住民(貴族たち)を相手に音楽家としての活動を始める時期です。その頃、彼はピアノの名手として自分をプロモーションしていくことを考えていたようです。この曲が書かれる前年には、皇帝ヨーゼフ二世の前で、当時、ピアノの名手として知られていたムツィオ・クレメンティと演奏を競い、技巧的というよりも芸術的で趣味のいい演奏だったと評価されています。
この曲はピアノ協奏曲ですので、ピアノが主役ではありますが、ピアニストの技巧を見せつけるだけの曲ではありません。他の楽器はただピアノを引き立てる伴奏役でなく、ピアノと弦楽器がまるで会話をするように曲が構成されています。特に印象深いのはピアノの登場シーン。パーティ会場の華やいだ雰囲気、着飾った人々の会話が弾むところに、いっそう美しいドレスをまとったお姫様としてピアノが登場する。そんなイメージで曲が始まります。
モーツアルトが活躍した時代、ピアノはまだ今日のような完成した楽器ではありませんでした。地域によって、また職人によって様々な様式のものがあったようです。モーツアルトのお気に入りはヨハン・アンドレアス・シュタインの製作するピアノ。シュタインだけでなく、このころのウィーンで使われていたピアノは、重厚さよりも華麗さ、荘厳な和音よりも、わずかな指の力で軽快な美しいパッセージを奏でることに向いていたものでした。まさにそんなピアノのために書かれた曲。いえ、シュタインのピアノこそがモーツアルトのために作られた楽器だったのかもしれません。



J.ラター 弦楽のための組曲            
Suite for Strings : John RUTTER. 1971
A Roving / I have a bonnet trimmed with blue 
/ O waly waly / Dashing away

ジョン・ラターは今年73歳。いまもなお現役の作曲家として、指揮者として、あるいは音楽プロデューサーとして活躍し続けています。
イギリスの作曲家の中には、過去の音楽からインスピレーションを受けて作曲する伝統があります。ジョン・ラターもそんな作曲家の一人で、グレゴリオ聖歌からジャズやビートルズまで、さまざまな分野の音楽が、彼によって新しい命を吹き込まれました。
この組曲のモチーフになっているのは、いずれもイギリスで歌い継がれている古い歌ですが、1曲目の「A-Roving」はまるで映画のエンディングを思わせる壮大な曲に生まれ変わっています。2曲目の「I have a bonnet trimmed with blue」の原曲には、青い縁取りの帽子の少女が、長い航海に出た若者の帰りを、ポルカのステップを練習しながら待つという歌詞が付いています。「O waly waly」は、広い川の岸辺で、せめて二人が乗れるボートをくださいと歌う歌ですが、まるでディズニー映画のお姫様と王子様が躍るシーンの挿入曲のように美しいメロディに仕上げられています。そして最後の「Dashing away」では、三連符(6/8拍子)の激しいリズムが、サザナミ祭りをフィナーレに導きます。



 収穫を祝う村の祭り、お国の一大事を賭けた貴族の舞踏会、モーツアルトの底抜けに明るいお姫様のパーティ、ディズニー映画のお姫様と王子様の踊り。別にそんな趣旨で選曲されたわけでもないのに、なんとなくストーリーが出来上がってしまった。曲の紹介ができると、すっかり弾けたような気になってしまうのだが…。

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