2015年3月29日日曜日

Vivace

 音楽用語というのはイタリア語が多い。どうやら現在に続く楽典が確立したのがルネサンスの頃のイタリアだったからのようだ。五線紙に音符を並べて表記する楽譜は、もともとは西洋から始まったものとはいえ、いまや世界共通語。読めるかどうかは怪しいが、これを読むのに言葉の違いが障壁になることはない。しかし、その楽譜のところどころに書かれている、おそらくイタリア語と思しきアルファベットの意味はあまりわからず、ほとんど無視していることが多い。

 さてさて、バッハのドッペルの最初に書かれている「Vivace」。速度記号としては、Allegroより速く、Prestよりは遅いぐらいのようだ。これまで八分音符が96ぐらい、つまり四分音符にすると48ぐらいで練習していたのだが、そんなもんではない。
 数ケ月前までのレッスンでは、メトロノームなんて関係なしに、とにかく弾けるところは速く、弾けないところも出来るだけ速く、というような弾き方をしているのを注意され、いちばん弾けないところがちゃんと弾ける速さで練習しましょう、ということになった。それでこの速さで練習していたのだが、それでも弾けない。
 そこでネットに載っていた練習用の動画を1/2の速さで再生して練習するようにした。八分音符が80ぐらいの速さだ。それで前回のレッスンで先生に聴いてもらったのだが、最初の4小節を弾く前に、遅すぎると呆れられた。

 この出来のわるい生徒を前に、先生もお悩みの様子で、ゆっくりでは練習にならないと仰ったり、だけどまずはゆっくりから練習しないといけないと仰ったり、結局、速度に関してはどうしたものか決めあぐねておられるようだった。

 先日、このドッペルを合わせる機会があって、合わせるのだから自分の都合ばかりも言っていられないし、なんとか八分音符で96ぐらいを目途に頑張ってみたのだが、そこで相方が仰るには、「Vivaceでしょ」とのこと。とにかく闘いを挑むような感じで速く弾くという。
 そんなのできるわけないよ
 と思いながらやってみると、これが意外と面白い。出来ないところは頭の中で拍だけ数えたり、とりあえず拍の頭だけを合わせるようにしたりなど、とても「ちゃんと弾けている」感じではないが、とにかく面白い。いままでこの曲を弾いていて、こんなに面白いと思ったことがない。ニ短調だし、バッハだし、重々しい旋律なんだけど、そんなことは関係なくて、ものすごく楽しい曲になる。これは新しい発見だ。

 それ以来、四分音符60、八分音符換算で120ぐらいにいきなりスピードアップした練習が始まった。
 昨日のレッスンでも、この速さでは弾けないところは何箇所かあって、そこはスピードダウンしてしまうところを指摘はされたのだが、四分音符60で練習していることについては、当分、その速さで弾けることを目指して、その速さで練習してきてください、ということになった。

 イタリア語のVivaceというのは、活発に、活気があるように、賑やかに、ということらしい。メロディラインは結構重々しいのだが、案外バッハも、この曲は賑やかに楽しく弾くことを意図していたのかもしれない。

2015年3月15日日曜日

集中力

 ヴァイオリンの練習でもなんでもそうなのだが、長時間、集中力を維持するのはなかなかたいへんなことだ。しかし、その集中力を維持できるかどうかで成果に大きな違いが出てくる。よく、短時間でもいいから集中してやる方が、長時間ダラダラと練習するよりも成果が出る、などということを聞くが、集中もせずにしかも短時間では仕方がない。集中力と時間のどちらも大事なんだ。

 妻がパートに出ていて子供たちがクラブ活動で留守という日は、基本的には家で好きなことが出来る。よく妻から、

あんたはええなぁ。
休みやったら好きなことできるやん。
主婦はたいへんなんやで。
休みでもやることがいっぱいあって
四六時中、休みなんかあらへん。

とよく聞かされるのだが。まさにその好きなことが何でもできる休みだ。この貴重な時間にヴァイオリンを弾かない手はない。窓がペアガラスで、多少、外に漏れる音もちいさいだろうと思われるリビングで、カーテンを閉めてヴァイオリンの練習。メトロノームに合わせてドッペルを弾く練習や、Youtubeの動画をゆっくり聴きながら弾く練習をしてみる。

 ところがこいつがどうも上手くは行かない。メトロノームに関しては、いまだに八分音符=96で最後まで通すことが出来ない。動画の方も、いつの間にかタイミングがずれてくる。

 こうも出来ないことばかりだと、練習がだんだん嫌になってくる。そのうち、そういえば風呂の掃除を頼まれていたな、とか、部屋がちょっと汚かったな、とか、晩飯の用意を何かしておいてやろうか、とかいろいろなことが気になりだす。
 料理も家事も決して嫌いな方ではない。風呂洗いといえば、子供たちに頼めば浴槽だけの掃除だが、私の場合は壁も床も、洗面器や腰掛けも全部洗わないと終わったことにならない。料理の方も、冷蔵庫の中と「簡単おかずのレシピ」を見比べながら、適当にいろいろと仕込みをしだすと、次々と、あれもこれもと考えて、結局3品ぐらい準備してしまう。
 別にそれで感謝されるわけでもないのだが、風呂場やトイレや汚れていた部屋がきれいになったり、それなりの料理が出来たりすると、結構充実感がある。

休みの日に好きなことをするのも結構たいへんだ。
気を抜いていると、いつの間にか、こうして集中力がないのを、家事や料理の所為にしてしまう。
よくないなぁ。

2015年3月8日日曜日

運気が遠退く

前回までのあらすじ
 弦が古くなったので、以前にD線だけ切れたときに全部交換して、E,A,Gはそのまま残していた高級ガット弦OLIVEに交換しようとしたら、A線が伸びてしまって、仕方なくAとGをネット通販で買ったら、円安と消費税8%のなんちゃらミクスの所為で以前より随分高くて、だけど、労働者を安い賃金で雇っていつでも首にできる労働規制の緩和のおかげで注文した弦がすぐに届いたので、さっそく交換した。

 さてさて、弦を交換した翌日の朝。いつものようにスタジオで朝練をする。これで練習にも精が出ると、ケースを開けると信じられない光景がそこに・・・・









 もう、画面中央に貼りつけても、まだ伝わらないぐらい衝撃的な光景だった。何もなくても結構高価な弦なのに、まだほとんど消費もしていないうちに消費税を取られているという事実に怒りが込み上げてくる。もともと社会保障費を確保するための増税たっだのに、相変わらず年金を減らす話ばかり。老後のための蓄えはインフレ政策で目減りするし、そもそも金持ちが儲かれば恩恵は国民みんなに行きわたるなんて、どう考えてもあり得ないじゃないか、と、弦が1本切れたことから持って行き場のない怒りが次々と込み上げてくる。

 この1件から先週は運気が後退しまくりだった。仕事で行き詰ったりとか、練習が思うように出来なかったりとか、乗ろうとしていた電車が目の前で扉を閉めて発車していくとか、そういう詰まらないことが起きるたびに弦が切れたことを思い出し、消費税が8%になったことを思い出し、円安で高かったことを思い出し、弦だけじゃなくて小麦も大豆もみんな高くなっていることを思い出して、込み上げてくる怒りを必死で抑える日々が続いた。

 そして今日はレッスン。

 切れたD線は、手元にあった他の弦で代用しつつ、またネットで注文。すぐ交換しても良かったのだが、レッスンが近いのでレッスン後に交換することにして、しばらく置いておいた。
 レッスンで弦をご覧になった先生から指摘事項が3点。

 まず、G線のつけ方がおかしい。写真を見ていただくとわかるのだが、弦をテールピースの下から通して、ループエンドの結び目のところをテールピースの上に出して止めていたのだが、これは上下逆。上から通して結び目はテールピースの下にするそうだ。
 さっそく先生の手により弦の貼り換えがなされる。
 は、早い。
 あっという間に、ほぼGの音に調弦まで出来てしまう。私がやると、なんか弦が切れそうで、恐る恐る、半音ずつぐらい音を上げていくのだが・・・。

 次の指摘は、写真のA線のコマのところにあるチューブ。不要なので取りましょうとのこと。ビビビ・・・と変な音が出る原因にもなるとのことだ。もともと付いていたものを取るのは、なんとなく勿体なくて、あとで「やっぱり残しておけばよかった」なんてなるのが嫌だから残していたのだが。
 
 3つめは、アジャスターを付けまくるのは素人っぽくて恰好わるいとの指摘。いや先生、恰好なんか構っていられないですよ、と言いたいところだが、若い女性から格好わるいと言われれば何とかしない訳にはいかない。どうせD線は取り換えるのだし、ということで、D線からアジャスターを取ることにした。

 クロイツェルは、最初の頃ほど細かいことを仰らなくなった。
 ドッペルは、いろんなことを一度に仰るので、ちょっと消化不良。言われたことは楽譜に書くようにして、そのうちのひとつだけでも次までに何とかしようと思うのだが、果たして・・・・。

 テールピースのところで弦を上下逆に付け替えたので、これで今週は運気も逆転するのか。



2015年3月1日日曜日

新しい弦でドッペル

 昨日の夕方に注文した弦が、今朝、新聞を取りに行ったらもう配達されていた。すごい世の中だ。週末だから発送は月曜日だろうと思っていたのだが・・・。ネット通販といえども何から何まで自動ではないはず。きっとこれを届けるために、何人もの人がこの週末の夜に仕事をしておられたのに違いない。円安の恩恵は巡ってこないが、雇用規制の緩和については恩恵は確かにある。こっちの方の恩恵を受けるのは何だか複雑な思いだ。
 さて、早く届いたのならその時間を無駄にする訳にはいかない。きのうのE線、G線に続いて、さっそくA線、D線も交換する。弦が新しいということもあるのだろうけれど、さすがガット弦だ。よく響く。特に音程がぴったり合った時の共鳴がすごい。

 しかし、そこに問題がひとつ。ガット弦は安定するのに少し長い期間が必要だ。前回、OLIVEをつけたときは確か2週間ぐらいかかったと思う。その間、E線以外は半音高くしてしまっておく、なんてことをした。
 今回は、弦を張って早速、弾いてみたのだが、弾き始めて10分もすると、もう、私のような素人でも別の音って分かる程度に調弦が狂っている。これもしばらくは仕方がない。

 ともあれ、これで練習にも精が出る。

 よく「バヨ会」でお付き合いいただく方の中にはセミプロレベルの方もおられる。そういうセミプロレベルの方同士が数年前のブログが最盛期の頃にはブログを通して知り合いになって「いちど合奏しましょうか」みたいなノリでオフ会をされておられるのを、ブログで拝読したりしていた。私のような素人の「バヨ会」は、あらかじめ楽譜が回されて、それを必死で練習して何とか合わせるのだけれど、上級者ともなれば「じゃ、ドッペルでも弾きましょうか」となるのに違いない。いつか自分もそんなふうにさりげなくこの曲を弾いてみたいものだと、激しく妄想したものだ。
 その頃の私は、パッヘルベルのカノンでさえ弾けなかったから、まずはカノンから、と思って練習をし始め、なんとか弾けるようになった。カノンが弾けたら次はドッペル、と思っていたのだが、そのドッペルが弾けるようになる前に、カノンが弾けなくなってしまった。ムムム…

 ま、しかし、そのドッペルももう少しというところだ。とりあえず、この動画で練習してみる。速さはこれの半分。右下の歯車のアイコンをクリックすると速度を変えられる。あまり細かくは設定できないみたいで、半分か1/4か、それとも標準より速いかのどれかなのだが、とりあえず半分にすれば、八分音符ひとつが80ぐらいのテンポになる。



 そこそこ出来てきたら、次はこれ。
 相手パートを聴きながら自分のパートを弾く練習。
 いやその前に、歌う練習。歌うぐらいできると思うなかれ。これが結構難しい。



完成するとこうなる。



動画をアップしてくださった方、ありがとうございます。